願うなら、きみが






「轢かれないですよ」

「どうだか」

「じゃあ試させてください」

「危ないからだめ」

「危なくない」

「だーめ」

「もーっ」



先輩は完全に、私のことを子供扱いしている。ひとつしか変わらないのに。

それを前に先輩に言ったことがある。そうすれば、『妹がいるんだよね、小学生の』と返された。つまりその妹さんと私を、重ねて見ているということだ。もう、私高校生なんですけど、と反論したら笑っていた。

ついでにお姉さんがいるということも教えてくれて、なんとなく、先輩がこうなのはお姉さんと妹さんの影響なのかなと思った。


車道側を歩いてくれたり、歩幅を合わせてくれたり、変化に気がついてくれたり、お菓子(女子の喜ぶもの)を持っていたり。

モテるためではなく、自然と身についたことなんだろうなぁ、と。

本当のところは、わからないけど。






「着いたよ」



先輩のその声で、脳内から引き戻される。もうそんなに歩いていたらしい。バイト先から徒歩10分程度の公園──休憩中に先輩が言った〝あそこ〟に到着した。



「今日も誰もいない」

「ほんとですね」

「まぁ、とりあえず座ろっか」



唯一の遊具であるブランコふたつ。先輩に促されてその片方に座った。先輩が右で、私が左。これも、いつものこと。

この公園はいつ来ても人ひとりいない。

だからひとりになりたい時とか、考えごとをしたい時にぴったりの場所だ。私は先輩としか来たことがないけれど、先輩は時々来るらしい。

そんなちょっぴり特別なこの場所を、『誰にも内緒だよ』と先輩が教えてくれたのが、この前の春だった。



「月が綺麗ですね」

「ね」

「あ、違いますよ? 愛の告白とかじゃないですからね?」

「はいはい、わかってるよ」



本当に、綺麗なのだ。この公園のブランコに座って見上げる月が。

ギィ、とブランコの軋む音が隣から聞こえて、月から先輩へ目線を下げる。先輩は月じゃなくて、私を見ていた。