願うなら、きみが






個人経営のカフェでバイトをしている私たち。店長は自由なひとで、先輩のそのミルクティー色の髪についても何も言わない。〝やることをきちんとやってくれれば、なんでも好きにしてOK〟のスタンスの持ち主である。

そんな店長で良かったなと、バイトを始めてすぐに思った。だって先輩のそれは、誰よりも似合っているから。



「ねぇ、ひお」

「はい」

「なんかあった?」



先輩の髪の毛を眺めていたら、何よりもやさしい眼差しで、やさしい声色で、そう聞かれた。ぱちぱちと瞬きを繰り返している間に、先輩の視線は私の手元に移動する。



「な、なんでですか」

「ひおがそれ小さく折りたたんでる時って、大体なんかある時だから」

「、」



──落ち着くな、と思う。

それはたぶん、先輩のこういうところにあるのだと思う。

バレてしまったか、と。手の中にある、無意識に小さく折りたたんでいたチョコレートの包み紙を、テーブルの上に置いた。



「……意識、してませんでした」

「そうだと思った」

「先輩ってすごいね」

「で、やっぱなんかあった?」

「……何もないけど、ありました」

「はは、何それ」



先輩は、ひとの些細な変化に敏感で、周りをよく見ることのできるひとだと思う。そういうところが、すごいなと思う。



「じゃあ、あそこ行く? 終わったら」

「行き、ます」

「ん。それまで頑張ろ」

「……ありがとう、先輩」

「いーえ。ひおは、かわいい後輩だからね」



〝かわいい後輩〟

先輩にとって、それは何人いるのだろう。先輩はみんなにこうもやさしいのかと思うと、時々心配になる。


まぁ、そこが先輩の良いところなのだけれど。


そんなことを考えていれば、「じゃ、ちゃんと休憩するんだよ」と、先輩が立ち上がった。まるで頭を撫でられているみたいに、やさしい声が降る。


着替えるためにカーテンの向こう側へ行った先輩。揺らめいたカーテンを見て、思う。



お菓子をくれなくたってきっと、私は先輩に懐いていただろうし、頼っていただろうし、甘えていたのだろうな、と。