浅黄色の恋物語

 雪国に引っ越した最初の頃はそれが何だか分からなくて困惑したなあ。
もっと困惑したのは白鳥の泣き声だった。
 真夜中に「ギャーギャー」って鳴きながら飛んでいく。 不気味だったなあ。
それが3月になると一斉に北へ向かって飛んでいく。
 たまに置き去りになってしょんぼりしてる鳥も居るけど。

 ぼくも真冬に岩手県に引っ越して春に北海道へ飛んできたんだよね。
渡り鳥なんだなあ。 南から北へ飛んでいくなんて。
 福岡にだっていい思い出はたくさん有りますよ。
そう、忘れられないのは文江ちゃんだね。 女子高生だった。
 パン屋でバイトしてた文江ちゃんとは仲が良かったんだ。
一緒に働いていたお姉さんが用事を作って店を空けるくらいにね。
 何処となく母さんに似てる子だった。 好きだったな。
でもその子はjrバスのガイドになった。
バスガイドって休みも不規則で家を留守にすることも多いから付き合えなかった。
 ぼくも全盲だしさ、ぼくが家に居たんじゃ心配ばかりで仕事にならないだろう?
それに母さんみたいな苦労をさせたくないなと思って、、、。
 1999年2月。 フーミンはバイトを終えた。
 「私、今日で終わりなんです。 今までありがとうございました。」
そう言って頭を下げた彼女はリンゴヨーグルトを差し出した。
 「北村さんってリンゴヨーグルトが好きでしたよね? こんなことしか出来ないけど受け取ってください。」
丁寧な子だったなあ。 一回り違うんだよね。
そのまま付き合っても良かったんだけど、、、。
でもさ、いきなり「好きです。」なんて言えないよなあ。 遊び人でもないんだし。

 その後、フーミンが鹿児島に引っ越したことをお姉さんから聞いた。
その時、ドキッとしたんだ。 携帯に鹿児島局番の電話が掛かってきてたから。
 あれは文江だったのかな? 折り返せばよかったのかな?
もし文江だったらそこから新しい物語が始まってたんだな。 残念。