浅黄色の恋物語

 そんなこんなでまたまた久子姉さんに会う日が来ました。 「あらあら先生。 待ってたよ。」
ついこの間は「私はうるさいからもう話さないね。」って言ってたはずなのに今日も賑やかに話してる。
 そりゃそうだよ。 独りぼっちじゃ寂しくて居られたもんじゃないから。
そんなわけで今日も久子姉さんの話をじっと聞いているわけです。 これも仕事だからね。
 お医者先生はパソコンの画面と睨めっこしてデータが良くなったとか悪くなったとかそんなことしか見ないけど
ぼくらはそんなわけにはいかないんだ。
 だって直接体に触れさせてもらうんだもん。 そりゃね話したがらない人だって居るよ。
その時はその人に合わせるんだ。 こちらに合わせるわけにはいかない。
 それでまあ何とかやり過ごすことだって有るよ。
機嫌が悪い時だって有るからね。

 マッサージをしながらあれやこれやと話し続けます。 久子姉さんは話したいんですねえ。
それを黙らせちゃいけません。 不満が溜まるだけだから。
不満を思う存分に吐き出してもらうのもぼくらの仕事。 お医者先生には出来ません。
 医療の基本は手を当てること。 だから〈手当〉って言うでしょう?
脈を診て皮膚に触れて顔色を伺い、声の調子を聴く。
そして出来ればお腹も診させてもらいます。 表面から触っただけで内蔵の様子も分かりますよ。
それが本当の医療です。 パソコンと話して薬を出すだけなら白衣を着る必要は無いかも。
ぼくはそう思うなあ。

 以前、治療をしながらお腹を診ていると「これが本当の手当なんだねえ。」って感激してるおばあちゃんが居た。
実際にそうなんですよ。 あっち向いてホイじゃ医療とは言えないなあ。
 まあ文句はそれくらいにしましょうか。
今日も元気なおじいちゃんは本当に元気なんですよ。 言いたいことをそのままぶつけてくるおじいちゃんです。
だから時々は冷や汗を掻きます。 危ないんだ。亦。
 そうかと思えばおとなしいおばあちゃんは本当におとなしい。 たまには騒いでよって言いたくなるくらいに。
それでもね会わない日は心配になりますよ。 どうしてるかな?って。
 3月ともなればさすがの大雪は降らないでしょう。 それでも時々は驚きますけど。
暖かくなってくると屋根の上から雪の塊がドカーンドカーンって落ちてきます。
地響きもすごいんだよね。 夜中だと目が覚める。
 車道だったら大変だったろうなあ。