浅黄色の恋物語

 介護保険がスタートしたことで新たに動き始めたのがケアマネージャーだよね。
おかげで施設はケアマネージャーの取り合いをするようになった。 給料もボーナスも破格のお持て成しだ。
 従業員の3倍近い給料を払うって言うんだから誰だって資格を目指したもんだ。 ところが、、、。
従業員が資格を取っても給料は上がらない。 外から引っこ抜いた人にだけ巨大なお持て成しをするって言うんだ。
 資格をやっとの思いで取った従業員は落胆どころの騒ぎではない。 裏切られた気分だ。
そのケアマネージャーには担当人数の制限が有る。 だから大変。
 50人くらいだったかな、でもそれを毎月一人でカバーするにも限界が有る。
現状を把握し医師や理学療法士 看護師などを交えてどんなサービスを提供するか判断する。
そして介護給付などと相談しながらサービス内容を決定するんだ。
 自宅で介護を受ける人には介護リフォームだって提案する。
鋪装具が必要であれば技師に相談したりもする。 朝から晩まで天手古舞の忙しさだね。
 ぼくらはというと老人ホームや老健での仕事を失って訪問マッサージに飛び込むしか無いんだ。
でもそれもまた苦難が多い仕事だよ。
 お年寄りの皆さんは「ぜひともやってもらいたい。」って言ってくるんだけど息子や娘が頑強に反対する。
いかがわしい訪問業者と似たような物だって思ってるからそれはそれはすごい反対をしてくる。
 どんなに説明しても聞いてないからね。 30年後が楽しみだよ。
 あんたらだって「腰が痛い。」とか「膝が痛い。」とかうるさく言ってくる年代に入るんだ。
その時、揉んでもらおうと思ってもぼくらは頑張って拒否するからね。

 そんなこんなで低空飛行をしながら20年が過ぎようとしてるわけですよ。 長かったねえ。
でもさ周りに文句を言ったって聞くわけが無い。 だって自分のことじゃないんだから。
 (自分にも関係有るな。)って思ったら人って真剣に話を聞くんだよ。
周りがそうだから自分の技術を磨き上げることに集中しようって決めたんだ。
 誰かに勝つのはそれからでいい。 まずは自分に勝つんだ。
ぼくが居なくなった時に「しまった!」って思わせればいい。
今はそう思ってるよ。