浅黄色の恋物語

　完璧に治したらいったい何歳まで生きるんだろう？
そんなことを考えながら鍼をします。　緊張しますねえ。
　確かにさ、30年もやってるんだから慣れてると言えば慣れてるよ。
でもやっぱり人の体に刺し入れるんだからね。　痛くても気持ち悪くてもダメ。
効かないのはもっとダメ。
　鍼が効くんじゃなくて施術者が鍼を効かせるんだ。
そのためには技術が確かじゃないとやってられないよ。
　刺せば何とかなるなんていう軽い物じゃないんだ。　世の先生方はそう思ってるらしいけどね。
しかもさあ、刺し入れた鍼に電気を流すなんて狂気の沙汰だよ。　狂ってる。
　おまけに鍼を刺して肺に穴を開けた人も居るし、なんだかなあ、、、。
　鍼は単なる道具じゃないの。　施術者の命の一部なの。
施術者の元気を送るんだ。　そして患者さんから邪気を抜きとるんだ。
それがぼくら鍼医の仕事だよ。
それが分かってない先生方が多過ぎて困るんだよなあ。
「どうせ鍼でしょう？」なんて平気で言ってくる人も居るからねえ。　どうせもくそも無いんだ。
　薬では、放射線では、化学薬剤では治せなかった病気を治せたっていう記録だって有るんだからそろそろ観念しなさいよ。
病院では「やっつける」か「切り取るか」「焼いてしまうか」なんだけどそんなことをぼくらはやらない。
　患者さんを元気にすれば病気は治るんだよ。　ぼくらが治すわけじゃない。
ぼくらは元気になる手伝いをしてるだけ。
お医者先生は患者さんを製造するのが仕事だもんねえ。　迷惑な話だよ。
きちんと仕事をしてくれ。