浅黄色の恋物語

　仕事に入る時にはまず必ず脈を診せてもらいます。　それでその日の調子は分かります。
高齢になると元気でも脈が弱くなっていることが多いんですよね。　心配します。
　脈を診ながらやっていると「お医者さんみたいだねえ。」って言われることも有りますが、ぼくらは医者ではありません。
医者はあくまでも病院のあの人たち。　ぼくは鍼医ですよ。
　あちらの先生たちは鍼でも何でも自由勝手にやることが出来るもんだから好き放題にやりまくります。
もちろん脈を診たり問診したりすることは有りませんねえ。　針金をブスブス刺しまくって電気をビリビリ流します。
　それで効くって思い込んでるところが素晴らしい。
それで何人も被害者を出していても「鍼は素晴らしい。」なんて嘯くもんだからいい加減にしてくれって言いたいもんですね。
　『論語読みの論語知らず』って言葉が有りますが、鍼灸やりの鍼灸知らずが多過ぎるんです　この頃。
誌上では立派な体験を書いていても実治では何も出来ない名前だけ有名人もたーーーーっくさん居ますよねえ。
　あんなのは１０００００００害有って一利無しです。　居ないほうがいい。

　さてさて、ぼくも仕事開始です。　声を聴きながら脈を診せてもらいます。
ぼくがこの仕事で大事にしていること、それは【やる仕事】じゃなくて【やらせてもらう仕事】だってことです。
　やらせてもらうから患者さんと心が通うわけ。　やってやるんだって思ったら通わない。
免許を持たせてもらってるんだからね。
　人数が多くなれば給料だって増えてくる。
そうすると【やらせてもらってる】っていう思いが無くなってくるんだ。
そうなると施術者は失格だね。　触らせたくない。
　そんな人は施術も雑になるからすぐに分かるよ。