浅黄色の恋物語

 もちろん、ぼくらが20代30代だったら子供のことも考えただろう。
でも今久子姉さんは80が近いんだ。 とてもそんなことは無理。
だけど、だったらそれで恋すら出来ないって言ってしまうのは間違いだと思うよ。
そりゃあ、セックスだって難しいだろう。 体力的にも厳しい。
でもそれだけが愛情表現だとは思えない。
一緒に居るだけでも伝わる思いは有るはずだ。 手を繋いだだけでも、、、。
 抱き合うだけが男と女じゃないんだよ。 ぼくはそう思う。
それに今の久子姉さんだからこそ伝わってほしい思いも有るはず。
 話を聞いてるとね、(寂しいんだろうな。)っていうのはヒシヒシと伝わってくるよ。
そこまで社交的な人だとは思えないけど、それでもやっぱり一人きりは寂しいからね。
 ぼくらはこの世でたまたま巡り会ったわけじゃないんだ。 前の世でも会っている。
会っていなければ今の世で巡り会うことは無かった。
 ぼくらの命の奥底には遥かな昔の記憶が生き生きと刻まれている。
それをぼくらはただ忘れているだけ。 忙しいとか何とか理由を付けてね。
 よくよく考えてみてよ。 君にだってあなたにだって(懐かしいな)と思えた出会いは必ず有るはず。
それを{偶然の出会いだ}と思ってそのままにしていないかい?
 それはそれはもったいないことだよ。 一人でもそれに気付いてくれたら嬉しいな。

 そんなわけでぼくは久子姉さんとの会話を楽しみにしているんだ。 静かに静かに心に沁みてくる気がして。
そうだ、この人とは遥かな昔に会っているんだ。 どれくらい昔かは知らないけど。
 放していることが一つ一つ心に沁みてくる。 初めて会ったはずなのになぜか懐かしい。