浅黄色の恋物語

 そんな中、久子姉さんはマイペース。 もちろんぼくもそう。
会ってみると何処となく懐かしく思える人。 ずいぶんと昔に会ってるはずの人。
 最初の頃はこれといってお喋りすらしなかったのに今では、、、。
誰もが羨ましく思うくらいに仲良しになってしまって会うたびに話が弾む。
 30分では物足りなくて何とか出来ないかと思っている。
もちろん他にも仲のいい人は居るんだけどね。 例えば美恵子ばあさん。
 美恵子さんに会ったのは3年前。 今の治療院で働き始めたばかりの頃。
 「先生 私の最期を看取ってください。」 いきなり言ってくるからみんながひっくり返った。
それから3年。 仲良しは今も変わらない。
 昔は美人だったっていう美恵子ばあさん、今は信じられないくらいのデブ。
それでも会うと引っ付いてくる。 背伸びをさせていると凭れてくるくらいに仲がいい。
 ここまでベタベタとくっ付いてくるのは美恵子ばあさんだけだね。

 山登りが好きだったっていうのは八重野ばあさんだ。 小柄な人でね、なんか可愛い。
「長生きしてね。」なんて言おうものなら「いーやーだあ。」ってものすごーく睨み付けてくる。
 最近では「私は地獄に行く。」ってよく話すんだよな。 「何で?」って聞いたら、、、。
「だってさあ、地獄って山も有るし谷も有るから楽しそうじゃないか。」って笑ってる。
確かに山も有るし谷も有る。 追い掛けられたり追い回したりもする。
考え方によっては何も無い平和な天国よりも楽しそうだ。
そういう考え方も有るんだなあ。 いろいろと教えられるよ。
 マッサージをしながらいろんな話をする。 でもね、暗い話は禁物だね。
だからって笑い転げてばかりも居られない。 現実は現実だ。
 朝から晩までギョッとするような情報が舞い込んでくる。
事件も有れば事故も有る。 やらかしたニュースだって有る。
 政治的な難しいニュースも有れば簡単なニュースも有る。
おばあちゃんたちの愚痴を聞かされることだって有る。 ぼくはそれでいいと思う。
だって、ただでさえ愚痴をこぼせない環境に居るんだから。
 「家族がこうで、、、」なんて言っても「まあいいじゃない。 お世話になってるんだから。」って宥められておしまい。
「こんな体だから、、、」って言うと「もっと大変な人も居るのよ。」って言われてしまう。
 そんなんだからおばあちゃんたちは我慢するしか無いんだよね。 それはあんまりじゃないか。
だからぶちまけたいことを遠慮無くぶちまけられるようにしたいと思ってる。
 聞いてる時は(大変だな。)って思うけど終わってみるとそうでもないんだよな。
だから久子姉さんだって安心して喋り捲るようになった。 それでいいじゃないか。
我慢させることは無いんだ。