「なんで、そんな平然としてられんの?」

「は?」

「まだ1年なのに、まだ…雫玖が死んで1年しか経ってないのに」

「…平然としてるように見えるんなら、俺は将来俳優になろうかな」

「はぁ?人が真剣にっ、」


グッと眉を顰め今にも泣きそうで、困ったように笑うこんな空人は今まで見た事がなかった。


「俺まで辛そうにしてたら、お前は元気になんのかよ」

「…」

「辛いのはお前だけじゃねぇよ。…俺だって、本当はまだ……」


ずっと小さい頃から一緒だった。
喧嘩しても家族みたいにいつの間にか仲直りして、高校だって合わせたように3人とも同じで。


「……なんで雫玖は死んだの?」


友達関係で悩む要素なんてなかったはずだ。
虐められていたわけでもなかったし、なんなら雫玖は皆から好かれていたし。
中学生の頃にお父さんが亡くなって、お母さんと2人で頑張っていたのに。

何も、問題なんてなかったはずなのに。


「なんで、自殺なんか…」


他人事のように“自殺”という文字をニュースで見ていたあの頃。
家庭環境も、いじめも、そんな原因になるような事雫玖の周りには1ミリも無かった。

涙のせいで視界が揺れて、空人がどんな表情をしているのか分からない。


「………分かんねぇよ、」


2限目が始まるチャイムが鳴った。