The previous night of the world revolution

「なんだ、アイズか…」

「なんだ、とは酷いなぁ」

俺を『青薔薇連合会』に勧誘した張本人、アイズことアイズレンシア・ルーレヴァンツァと。

そして、もう一人。

「聞いたぜルル公。天下の帝国騎士官学校に殴り込むんだって?」

「殴り込むんじゃない。スパイしに行くんだ」

あのアシュトーリアさんに、ちょっとお馬鹿、と言わしめた…俺と同い年の青年。

名を、アリューシャ・ヘルフェンリッツ。

男の癖に、こいつの指は真っ赤なマニキュアが塗られていた。

「楽しそうだなぁ。ルル公だけずるいぜ。自分も帝国貴族のお坊っちゃまと喋ってみたいよ。あいつら相当馬鹿そうだもんな!」

「お前よりましだろ…」

けらけらと楽しげに笑うアリューシャ。こいつはこんなだから、潜入任務から外されるんだ。

こんなふざけた男だが…遠距離戦闘において、こいつの右に出る者はいない。

『青薔薇連合会』きっての、凄腕スナイパーなのである。

彼も色々あって、アシュトーリアさんに拾われた…俺達の家族の一人だ。

「潜入期間は?」

「短くても三年だってさ」

「三年か…。三年も君がいないなんて、詰まらないなぁ」

アイズは心底不満げだった。俺だって、三年もここから離れるなんて気は進まない。

また、潜入中は不用意に『連合会』と接触するのも危険だ。手紙やメールなども、細心の注意を払わなければならない。

つまり、頻繁にやり取りは出来ないということだ。

でも。

「アシュトーリアさんの頼みだからな」

「…まぁ、仕方ないね」

アシュトーリアさんなら、俺が強く拒否すればきっと、無理に潜入任務をやらせようとはしないだろうが。

彼女の為に役に立てることがあるなら、何でもやってみせる。

それが、俺の信念だ。

「とりま、お土産宜しくな。ルル公」

「何の土産だよ」

「へまするんじゃないよ。ルルシー。周りは敵だらけなんだから」

「あぁ、分かってる」

アリューシャは放っとくとして、アイズの忠告はしっかり肝に命じておかなければ。




…帝国騎士官学校土産って、果たして、何かあるのだろうか。