The previous night of the world revolution

「それにしても、何故…帝国騎士官学校に潜入するのですか?直接帝国騎士団に入れば…」

わざわざ学校を経由して騎士団に入らなくても、帝国騎士団の門は広い。入団希望者は、健康面や犯罪歴に引っ掛からなければ、大抵入団が認められる。

俺の場合犯罪歴に引っ掛かりそうだが、そこはアシュトーリアさんが上手く裏から手を回してくれるとして。

「勿論その手はあるわ。けど、帝国騎士官学校を経由した方が、帝国騎士団に入ったとき重要なポストに就きやすいのよ」

「あ…確かに、そうですね」

帝国騎士官学校は、そもそも騎士団において重要な役職に就く人材を育てる為の教育機関だったな。

「それに、帝国騎士官学校に入れば、未来の騎士団員とも繋がるパイプも得られる。それも相手は貴族様よ?」

帝国騎士官学校の生徒は、そのほとんどが貴族の子女。

だから学校に潜入すれば、未来の有望な帝国騎士と顔見知りになれる訳だ。

成程。

「更に、普通に入団するときは徹底的に素性を調べあげられるけど、帝国騎士官学校からの卒業生なら、そこまで調べられはしないわ。精々学校からの成績表と推薦書くらいよ。まぁ、入学時に色々調べられるだろうけど…そこは安心してちょうだい」

「はい」

一石三鳥という訳か。抜かりない。

けれど、まだ最大の疑問が残っている。

「…でも、アシュトーリアさん…。その重要な任務を、何故俺に?」

正直、自分が潜入任務に向いているとは…あまり、思えないのだが。

「あら、そんなことを聞くの?だって、ルルシーが一番適役じゃない」

「適役…ですか?」

それはまた、何を根拠に?

「だってあなたは、人を騙したり拐かす能力が高い。更に、いざというときは自分の身を充分守ることも出来る。帝国騎士官学校のハイレベルな教育にも、ある程度ついていけるだけの素養がある」

「…」

「それに、他に行く子はいないでしょう?アイズは年が行き過ぎてるし、シュノは女の子だし…。アリューシャは、良い子なんだけど、ちょっとお馬鹿だし…。他の子は帝国騎士官学校の教育についていけるだけの能力がないわ」

成程…。つまり消去法か。

「私だって嫌なのよ。あなたと三年も離れるなんて。でも…」

「…分かりました。お引き受けします」

最初は戸惑ったが、それでも…アシュトーリアさんの頼みなら。

何でもやり遂げる。

「…大丈夫?嫌なら断っても良いのよ」

「いいえ、お任せください。必ずや、あなたの期待に応えてみせます」

俺は今や、その為に生きているのだから。

「…分かったわ。それじゃ、手続きを進めるわね」

「はい」

潜入任務とやら、恙無くこなしてみせよう。