何がどうなって、こうなったのか。

昨日の同じ時間は、ねぐらでのんびりと、野良猫と昼寝していたというのに。

今日の俺は、なんとマフィアのボスと優雅にお茶会している。

しかも、二人きりで。

どうなってるんだ。俺の人生は。

あまりの緊張で、頭がふらふらしてきた。

それなのに目の前のマフィアさんは、楽しそうにお茶を飲んでいた。

貫禄が凄まじいな。

「アイズが来なくて残念ね…」

しかし、アイズがお茶会をパスしたのがちょっと寂しいらしく、しょぼんとしていた。

「昨日はよく眠れた?」

「あ、えぁ…はい」

「そう。それは良かったわ」

「…」

「それに、その服もよく似合うわね」

うふふ、と楽しそうに笑うアシュトーリアさん。いや、あの。嬉しくないです。

「はぁ…えっと、この服はちょっと…」

「…嫌なの?」

「えっ?いや…嫌ではないですけど…」

内心物凄く嫌だが、きっぱりと嫌です!なんて言ったら逆鱗に触れかねないので、そう答えておく。

「そう…。仕方ないわね。じゃあ今度、あなたに合う服をオーダーメイドしましょうね」

「い、い…えぇ…?」

「楽しみだわ。あなた顔が可愛らしいから、何着ても似合うわよ。どんな服にしようかしら」

るんるんしてるところ申し訳ないですが、俺のマフィア加入は決定事項なんでしょうか。

「…あの、俺…」

「?何かしら」

ちゃんと言わなければ通じないらしいと、俺ははっきり口にすることにした。

危険ではあるけど…このまま有耶無耶にマフィアに入れられるよりましだ。

「ほん…本当に、俺はマフィアに入るんですか…?」

「…気が進まない?」

「いえ、その…何て言うか…自分がそんな、大した人間だとは思えなくて」

俺は所詮、路地裏で薄汚い男を相手にする程度の人間だ。

マフィアに入ったって…所詮、弾除けになって死ぬくらいしか、俺に役目はないだろう。

「…あなた、貧民街で娼夫をしていたそうね」

「…」

「アイズに聞いたわ」

否定することも出来ず、俺は頷いた。