…翌朝。

目が覚めると、西洋風の洒落た壁紙が視界一杯に映った。

…あれ。おかしいな。

安宿の天井でもなければ、濁った青空でもない。俺は、一体何処で…。

…そこまで考えて、ようやく思い出した。

そうだ。ここは…マフィアの拠点。

昨晩、ならず者に強姦されそうになった俺は、アイズというマフィアのメンバーと出会い。

半ば強制的にここに連れてこられ。

おまけにマフィアのボスらしいアシュトーリアさん、と話をさせられ。

その後シャワーを浴びて、身の毛のよだつような服を貸してもらって…で、この部屋に案内されたのだった。

品の良い西洋風の家具が並べられた、ホテルの一室のような客間。

ベッドなんて、ふかふか過ぎて沈むかと思った。

のろのろ起き上がり、自分の着ている服を改めて見下ろした。

…白い。

白い、ナイトドレスである。

ふりふりで、レースがついた、いかにも可愛らしいナイトドレス。

まぁ、女物である。

服がないのは分かるけど、このチョイスは悪意すら感じる。

アイズが笑っていたのはこういう理由である。

と、そこに。

「やぁ、おはようルキハ」

「…アイズ…」

ノックもせずに、元凶のアイズが部屋に入ってきた。

「気分はどう?うん、最悪なようだね。それは良かった。で、今日着る服はこれね」

「おまっ…」

アイズが差し出してきたのは、これまた可愛らしいワンピースだった。

「大丈夫。君女顔だから、似合うよ」

「そういう問題じゃないし、まだ何も言ってない」

そして、似合いたくもない。

「仕方ないでしょ。私の服じゃサイズが合わないし…。これは、そう。不可抗力という奴だよ?」

「何が不可抗力だ」

「そして、アシュトーリアさんからの命令でもあるしね」

「…」

マフィアのボスの名前を出されたら、俺も黙るしかない。

こいつ、分かっててやってるな。

半笑いやめろよ。

仕方なく、俺は渋々ながら…そのワンピースに袖を通した。

鏡を見て、確かにちょっと似合ってるなぁと思ったのは、言わないことにした。