「失礼しま~す」

「あら、二人共…。お帰りなさい」

アシュトーリアさんは、俺達を見て顔を綻ばせた。

その目は、愛しい子供達を見るそれだった。

「その顔だと、良い結果になったみたいね。ルレイア」

「当然です。この騒ぎですからね。俺達に頼らざるを得ませんよ」

「そうね。これでマフィア撲滅計画もお蔵入り。それどころか当分は我々に手出しを出来ないでしょう」

帝国騎士団が、『青薔薇連合会』の言いなりになる。

全く、愉快なことこの上ないな。

「ありがとうね。あなた達のお陰で、家族を守ることが出来たわ」

「いいえ。お役に立てて幸いです」

アシュトーリアさんが、俺を裏切らない限り。

俺は、絶対に裏切らない。そう約束したからな。

「ますます、あなたを裏切るなんてことは出来ないわね。そんなつもりは全くないけど。その点ルレイアを捨てた帝国騎士団は、本当に馬鹿だわ」

「同感です」

俺を裏切ったりしなければ、こんなことにもならなかっただろうに。

あの馬鹿共は、一番敵に回しちゃいけない人間を敵に回したのだ。

そのツケを、これからたっぷりと払うと良い。

「ルルシーも、ありがとうね」

「は…。いえ、俺は何も…」

アシュトーリアさんに声をかけられたルルシーは、驚いたように否定しようとした。

しかし。

「あら。あなたがいるから、ルレイアが制御出来るのよ?ルルシーがいなかったら、そもそもルレイアはうちに入ってはいなかったでしょうし…。入っていたとしても、とっくに私を殺して自分が首領になっていたはずよ」

それはそうだろうな。

「ルルシーがいるから、ルレイアはルルシーの隣、という居場所を得ることが出来るの。あなたが、ルレイアの帰る場所なのよ」

「そうそう。ルルシーは俺の大事な相棒ですからね」

「…そう、か」

ルルシーは苦笑気味に、俺をちらりと見た。

「…厄介な相棒だなぁ」

「ちょっと。それどういう意味ですか」

「エロいし、すぐキレるし、飯を集ってくるし…」

それ全部、褒め言葉として受け取っておこう。

「…でも、俺はそんなルレイアが好きだ」

「…」

…そういうこと言われると、惚れるなぁ。

うっかり食べちゃいたくなるからやめて欲しいんだけど?

「二人共、これからも宜しくね」

「はい」

「勿論です」

ルルシーが、ここにいる限り。

アシュトーリアさんが、俺を裏切らない限り。

俺はここにいる。ここが、俺の居場所なのだから。