The previous night of the world revolution

なんということだろう。拍手を送りたい。

当人達からしたらとても笑えたものじゃないのだろうが、俺からしたらお笑い以外の何物でもない。

笑ってなきゃやってられないだろう。

「…」

アドルファスの渾身の一撃を食らったオルタンスは、勿論、反撃はしなかった。

このまま追撃したって、抵抗はしないだろう。

本当ならこれは、立派な反逆罪だ。オルタンスはアドルファスを懲戒することも出来る。

けれど、今ばかりは。

殴られても仕方ないとばかりに、甘んじて受けた。

そりゃ仕方ないよな。自業自得だもん。

あと、オルタンスを殴るべきなのはアドルファスじゃなくて、俺だからな。

まぁ、殴らないけど。

だって、殴るより遥かに楽しい光景が、目の前にある。

俺は、口を出さない方が良いのだ。

「…屑が」

アドルファスは吐き捨てるようにそう言って、自分の席に座り直した。

「もうめちゃくちゃだ。こんなことになって、どうやったって取り返しがつかねぇぞ」

全く。その通りである。

「…いくら女王陛下のご意志とはいえ…これはあんまりだ。罰するべきを罰さず、無実の者に罪を着せるなど…」

六番隊のリーヴァも、酷く険しい顔をしていた。

彼もアドルファスと同じ考えか。

まぁ、大抵の者がそう言うだろうけど。

「大体…そんなことをして、ルシファー殿がもし真実を公表すれば、このような混乱を招くこと、想定しなかったのか」

「…あぁ、想定はしていた。だが…やるとは思わなかったんだ」

オルタンスは、ぶん殴られた口許の血を拭って言った。

「帝国騎士団を追放された時点で、自殺するだろうと踏んでいた。あるいは、再起不能になるだろうと」

…分かってはいたけど、実際に口に出して言われると腹立つな。

しかもその通りだったというのが更に苛つく。

「『青薔薇連合会』に入ったと知ったときも…この真実だけは、元帝国騎士団の四番隊隊長として、生涯守り通すだろうと信じていた。黒に染まりきることは出来ないだろうと思っていた。その点だけ…ルシファー・ルド・ウィスタリアの、帝国騎士としての矜持を…信じていたんだがな」

…そりゃまぁ、残念でした。

「自分が捨てておいて、都合良過ぎでしょ」

「そうだな。俺が甘かった」

オルタンスにとっての誤算は、その二つだ。

俺を立ち直らせる存在が…ルルシーがいたこと。

そして、俺が予想以上に、黒に染まってしまったこと。

だから、こんなことになった。俺もまた、オルタンスがしたように、オルタンスを裏切ったのだ。

「…やっぱり屑だな、お前」

アドルファスはばっさりとそう切り捨てた。

アドルファスの気持ちはよく分かる。俺もその通りだと思っているから。

「てめぇのその判断のせいで…どれだけの人間が傷ついたと思ってんだ」

最早、いちいち数えることも出来ない。

どれだけいるだろうなぁ。オルタンスが俺を裏切ったが為に、傷ついた人間が。

俺だって、そんなことは考えない。

今となっては…考えても、どうしようもないことだ。