The previous night of the world revolution

アシュトーリアさんの執務室で、一体何の話をするのか、俺は大体、予想がついていた。

このタイミングで俺を、しかもルルシーとセットで指名する理由なんて、一つしかない。

「…ルレイア。分かってると思うけど」

「はい」

「それと、あなたを信用していない訳じゃないけど。それでもあなたは…元、帝国騎士団の人間だわ」

「はい。その通りです」

ルルシーのような、スパイではない。

俺は帝国騎士団に入る為に、生まれたときから教育を受け。

そして実際、一年程度とはいえ…帝国騎士団で、隊長をやっていた。

俺は元より、最初はあちら側の人間だった。

それは疑いようもない事実だ。

「そしてあなたは、今回…その帝国騎士団と、戦うことになる訳よね」

「そうなりますね」

「出来ないと言っても、責めるつもりはないわ。だから正直に言ってちょうだい。あなたは、帝国騎士団の人間を殺せる?」

「めちゃくちゃ楽しみですけど」

あいつらを。

あの、忌々しい女王の犬共を。

殺せるなんて、そんなに楽しいことがあるか?

想像しただけで胸が高鳴るというのに。

「もっとはっきり言いましょうか?あなたは…お姉さんを殺せるの?」

「あぁ…そういうことですか」

あの人を。殺せるか、と。

まぁ、仲良かったからなぁ。

殺せると思っていても、いざ目の前にしてみたらやっぱり殺せないとか、俺がそうなることを危惧してるんだろうけど。

でもね。でも、それは要らぬ心配だ。

「…アシュトーリアさん。俺がゴキブリを殺せない人間だと思いますか」

隣にいたルルシーが、思わず息を呑む音が聞こえるほど。

俺は、ぞっとするような冷たい目をしていたのだろう。

「生きる価値のあるゴキブリなら生かす。でも、人間に楯突くゴキブリは殺す。そこに躊躇いを抱く必要がありますか」

「…そう。それなら良いのよ」

アシュトーリアさんは、にっこりと微笑んだ。

「ただ、あなたが…帝国騎士団と戦うことを躊躇うんじゃないかと思ったものだから」

「ご冗談を。それこそ、俺の長年の望みではありませんか」

奴らを真っ向から潰せるなんて、そんなに愉快なことがあるだろうか。

しかもこれは、「始めから勝ち戦」なのだから。

「聞いたわね、ルルシー。あなたが証人よ」

アシュトーリアさんは、ルルシーに向かって言った。

「…はい」

やはり、ルルシーは証人として呼ばれたのか。

そんなこと、いちいちしなくてもどうせ俺は裏切らないのに。

「それじゃ、作戦を決めなくてはね。帝国騎士団のことをよく知るルレイアに、意見を聞きたいわ」

「あぁ、アシュトーリアさん。俺を頼ってくれてありがとうございます。でも、作戦を決める必要はありません」

「…」

「こちらは一滴の血を流すこともなく、この争いを終わらせましょう」

勿論、こちらの勝利でな。

「…良いの?」

それが何を意味するか、分からぬアシュトーリアさんではない。

「構いません。それで『青薔薇連合会』を守れるなら」

「…ルレイア…」

「それに、俺の復讐も完遂されますしね」

一石二鳥とはこのこと。

出来れば隠しておきたいところだったが。

オルタンスが「俺達の」均衡を崩すなら、こちらも受けて立つ。

「…分かった。じゃあ、お願いするわ」

アシュトーリアさんは、悲しげに微笑んだ。

「関係機関への根回しを頼みます。アシスファルト帝国の方には、俺から」

シャリヤを抱き込んでいるから、彼女に便宜を図ってもらうとしよう。

覚悟を決めてしまえば、あとは早かった。