The previous night of the world revolution

俺は身も心も黒に染まることで、なんとか生き長らえたのだ。

今更、あちら側に戻ることなど出来ない。

戻りたくもなかった。あんな澱んだ場所に。

だから、知られたくなかった。

ウィルヘルミナに真実を教えたのは、彼女を手篭めにするのにどうしても必要だったから。不可抗力だったのだ。

どんなに謝られたって、奪われた権利を返してもらったって。

俺が心に負った傷が、少しでも癒える訳ではない。

もう、戻れないのだ。

「…ねぇ、ルルシー」

「うん?」

「もし、ウィルヘルミナが真実を喋って、帝国騎士団が俺に謝罪して、奪ったもの全部返すから戻ってきて、って言ってきたとして」

「あぁ」

「あなたは、俺のこと送り出しますか?」

「…」

…何て、答えるだろう。

光の差す側に戻れるのなら、戻れと。

そう言うかもしれないと思った。

「…お前が戻りたいなら、背中を押す。でも戻りたくないなら、行くな」

「…俺が戻りたいって言うなら、行かせるんですか」

「お前がそうしたいのならな。ただ…その場合、俺は泣く」

ふふ。へぇ、そうかぁ。

「ルルシー、泣くんだ?」

「泣くに決まってるだろ。多分、死ぬほど泣く。アイズもアリューシャも慰めてくれるだろうけど、それでもめちゃくちゃ泣く。多分シュノも同じくらい泣くぞ。いや…俺の方が泣くと思うけど」

「あはは。ルルシーの泣き虫~」

「うるさい。立場が逆だったらお前は泣かないのか」

「いや、泣きます。多分干からびますよ」

泣き過ぎて。枕とかぷかぷか浮きそう。

ルルシーがスパイだと発覚したときも、もう一生会えないだろうなと覚悟していた。

でも今は、もう無理。

今、彼の傍から離れろと言われたら。

多分、俺の右手首には、左と同じ模様が刻まれることになるだろう。

「俺はあなたと一緒にいたい」

「あぁ、俺もだ」

あなたがいる場所が、俺のいる場所だから。

そこが光であろうと闇であろうと、どちらでも構わないのだ。