The previous night of the world revolution

『事後』はさっさと帰って、入念にシャワー浴びて、家に引きこもっとけよ、と。

アリューシャには、くどくどと言われるのだけど。

フェロモン散布されちゃ堪らない、と。

けれども今日ばかりは、『事後』の訪問を許して欲しい。

俺は彼の家を訪れた。夜中だった為、電気はついていなかった。

もう寝てるのかな。

寝てても良いのでお邪魔させてもらおうと、玄関のドアに手をかける。

勿論、鍵は開いていない。

しかし、困ることなど何もない。

俺は無断で作ったスペアキーと、彼の指紋を使ってロックを解除する。

「お邪魔しまーす…」

しーん、と静まり返る部屋の中。やっぱり寝てるのかなぁ。

寝てても良いから、顔を見たいなぁ。

じゃあ寝室に行こう、と歩き出しかけた瞬間。

かちり、とこめかみに銃口が当てられた。

「…」

「…」

振り向くと、物凄く微妙な顔をした彼の姿があった。

勿論、怯えたりはしない。

何故なら、銃口を向けていながらも、殺気はまるで感じなかったから。

殺す気はないのに、どうして銃口を向けるのか。

それは簡単なことだ。要するにこう言いたい訳だ。

お前、何不法侵入してんだよ、と。

「こんばんは、ルルシー」

「…来るなら、普通に来いよ。全く」

呆れたように言って、ルルシーは拳銃を下ろした。

「出会い頭に拳銃向けてくるなんて、躾のなってない子ですねー、ルルシーは」

「夜中にアポなしで人の家に不法侵入する奴に言われたくない」

ご最も。

「それで?何しに来たんだ。大体、『事後』じゃないかお前」

あー。やっぱり分かっちゃう?

ルレイアフェロモン、とかいうのが、だばだば出てるのかなぁ。

「ルルシーとお喋りしたくて」

「…夕飯は?食べてきたのか?」

「食べてないですけど、お腹空いてないのでお喋りに付き合ってくれると嬉しいです。駄目だったら駄目でも良いけど、俺が泣きます」

「駄目じゃない。飲み物でも淹れてくるからちょっと待ってろ」

ルルシーの、この優しさよ。

荒んだ心が癒される。

ルルシーがいて良かったなぁと、しみじみ思う今日この頃である。