そもそも、何故『青薔薇連合会』が自分達を家族だと言っているのか。

それは、本当の家族がいないか、あるいは本当の家族を家族と思いたくないか、そのどちらかだからである。

だから、満たされない家族愛を満たす為に、仲間を家族と呼ぶ。

普通の家族のもとで育って、人並みに、真っ当に育てられた人間なら…そもそもマフィアに入ろうなんて、そうそう思わない。

その為、『青薔薇連合会』にいる人間は、大抵が天涯孤独か、あるいは家族と絶縁している。

俺もそうだし、ルルシーもそうだ。

「…家族はね、いますよ。一応」

「…仲良しだった?」

「部分的には」

全体的には、大して仲は良くなかった。

「姉がね、いるんですよ。今は絶縁してますけど、昔は…それなりに仲良かったですねぇ」

俺にとって家族と言えば、即ち姉のことだった。

ルルシーを除けば、誰より信頼もしていたし…大好きな姉だった。

昔は、だけど。

「あの馬鹿姉と来たら、俺が学校で酷い目に遭ってるっていうのに助けるどころか慰めてもくれないし、俺がオルタンスに嵌められて帝国騎士団から裏切られたことにも気付きやしない。あんな馬鹿、いつまでも慕っていると思ったら大きな間違いですよ」

今や姉に対する情など欠片も残っていない。あの人まだ生きてんの?

「両親は…?」

「父親は物心つく前に死んだそうです。母親は元々ふるーい考えの人で、子供に対する情なんて一片たりとも見せてもらった記憶はないです」

ろくな母親じゃなかった。 あの母親とは、血を分けた以上の関係にはなれないと思っている。

「そういや影みたいな兄貴も一人いましたけど、あれとも仲は良くなかったなぁ…」

「そう…」

「まぁ、今となっては、血の繋がった家族なんていないも同然ですけどね」

俺が彼らを愛してなどいないように、彼らもまた俺を愛してなどいないだろう。

それどころか、お互い憎み合うような関係だ。

特に向こうからの憎悪は相当なものだろうなぁ。俺を裏切り者と信じている訳だし。

「ルレイアは、寂しかったの?」

「…うーん」

シュノさんの、この抽象的な問いは少し、答えづらかった。

寂しかったのかなぁ?俺は…。

「どうなんでしょうねぇ…。自分の生まれた環境を当たり前のものだと思ってたから、そんなに寂しくは…。…でも今になって思えば、寂しかったんですかねぇ」

寂しさを感じる暇さえないほど、毎日忙しかった。

でも今振り返ると…寂しかったのかもしれない。

少なくとも、ルルシーと会うまでは。

彼に会うまでの俺の人生は、本当につまらないものだった。

彼と出会ってから、俺の人生は始まったのだ。