ペット専門店を出てから。

「私ね、最近ね、コオロギをルーちゃんにあげられるようになったの」

「そうなんですか?」

それは凄い。

少し前まで、彼女はコオロギのグロテスクな見た目がどうしても受け付けなかったようで。

ルーさんを可愛がりながらも、コオロギとミルワームはあげられなかったのに。

「目隠ししてね、鼻を洗濯バサミで摘まんで、ゴム手袋して、ピンセット使ったら、あげられたの」

「…」

「…でもルーちゃん、食べてくれなかったの。やっぱりルレイアじゃないと駄目なのかなぁ?」

俺じゃなきゃ駄目なんじゃなくて、飼い主が恐ろしい格好で自分にコオロギを持ってくるものだから、びびって食べられなかったんだと思う。

可哀想に、ルーさん。後で俺がコオロギあげますからね。

「…ところでシュノさん、もうすぐお昼ですが、何処で食べます?」

「お昼…」

「何が良いですか?俺奢りますよ」

この話題からは離れようと、俺はわざと昼食の話を出した。

ここはレディファーストと行こうじゃないか。

俺の気分的には…何が良いだろう。和食かな?

「…ルレイア、私、お寿司食べたい」

「分かりました。じゃあ近くにあるお店を探して…」

「回るお寿司が食べたいの」

「…?」

回る?回るって…世に言う、回転寿司って奴?

俺の印象では、お寿司と言うと、回らない店なんだけど…。

「行ったことないから、行ってみたい」

「…そうですか、分かりました」

シュノさんがそれが良いと言うなら、俺は別に何でも構わないのだが。

何だろう。たまには庶民的な味を楽しみたいということか?

でもそれだと、随分安上がりになってしまうな。

…まぁ、シュノさんが良いなら、良いか。

そんな訳で、俺達は近くの回るお寿司屋さんを目指した。