The previous night of the world revolution

「…喜んで良いのやら、悪いのやら」

「…」

アイズレンシアが入院する病室の外のベンチに腰掛け、俺はぽつりとそう呟いた。

隣にいるルルシーは無言である。

目的を達成して、アイズ達を送り届けるように一緒に帰国した俺だが。

正直あまり喜べなかった。全員命は無事だったから安心したけど、でも…彼らの傷の深さを見ると、どうにも。

アイズなんて、未だに目を覚まさないし。

アシュトーリアさんはアイズが戻ってきてから、他の仕事をほっぽりだしてアイズの傍に付きっきりであった。

今にも泣きそうな顔でアイズの手を握るアシュトーリアさんは、とてもルティス帝国最大の非合法組織の首領には見えなくて。

とてもじゃないが、痛々しくて見ていられなかった。

そんな訳で俺とルルシーは、こうして病室の外にいるのである。

これはお見舞いの内に入るのだろうか。

「アイズ…。いつ起きるんでしょうかね」

「…」

「ずっとこのままってことはないでしょうけど…」

「…」

…うん。

「…ルルシー、なんか怒ってます?」

「…怒ってないと思ったか?」

だよね。やっぱり怒ってるよね。

見るからに不機嫌そうだし、全然喋らないし。

俺が気になるのは、ルルシーが何に対して怒っているかだ。

アイズ達をあんな目に遭わせた『SiV』に対して怒っているのなら良いのだが、ルルシーの怒りって、もしかして。

「…俺ですかね?」

「お前以外に誰がいるんだ。この馬鹿」

あっ…。やっぱり。

ルルシーが怒っているのは、案の定俺に対して、だった。

そうじゃないのかなぁと薄々思っていたけど、本当にそうだった。

「そんな怒らないでくださいよ…。ちゃんと無事に帰ってきたじゃないですか」

「お前は自分に子供がいたとして、真夜中に無断外出して『無事に帰ってきたんだから良いじゃん』とか言われたら、許すのか?」

「俺子供じゃないですし…」

「じゃあ例えを変える。アシスファルトに単身乗り込んだのが俺だったら、お前は許すのか?」

「めちゃめちゃ怒りますよ」

「そうだろうが」

俺を差し置いて一人でそんな危ないことをするなんて、そんなの怒るに決まってる。

成程ルルシーの怒りはそれと一緒か。そりゃ申し訳ないことをしたなぁ。

「送り出すのを許しはしたがな、無事に帰ってきたのも良いけど。でも俺は怒ってるんだからな」

「ごめんなさい…」

ここは素直に謝っておこうと、俺は謝罪の言葉を口にしたのだが。

「駄目だ。許さん」

こめかみにぴしっ、と血管を浮き立たせたまま、ばっさりと切り捨てられた。

「良いか?しばらくは絶対お前に夕飯作ってやらないからな。カラオケも行かない」

「そんな!ルルシーそれはあんまりですよ!」

俺の日常の楽しみが。塵と消えて行く。

ルルシーのご飯が食べられなかったら、俺は飢える。飢えて死んでしまう。

何とかして、ルルシーの怒りを鎮めなければ。