The previous night of the world revolution

そこからは、早かった。

一晩ですっかり俺に夢中になったシャリヤ・ウィンクロースは、俺の思い通りに動いてくれた。

こんなに上手く行って良いのかと思うくらいに。

俺が彼女を操り、彼女は夫を操った。

妻や周りの人間の言いなりだという彼女の夫は、シャリヤの要望に疑問を呈することもなく、言われるがままに動いてくれた。

あんな気の弱い男でも、権力だけはアシスファルト帝国でも有数であった。

彼は妻の求めに応じるまま、『SiV』に資金援助をする貴族、企業などに圧力をかけて援助をやめさせ、更に『SiV』の取り引き相手にも圧力をかけた。

その上で、脅しをかけた。

『青薔薇連合会』のアシスファルト支部に介入するなら、このまま圧力をかけ続けると。

更に、アシスファルト支部に派遣したアイズレンシア達の身柄を引き渡すように、と。

同時期に、ルティス帝国にいるアシュトーリアさんも、同様の要求をしたらしい。

アイズレンシア達を無事に返さないなら、アシスファルト帝国にある全ての組織との取り引きをやめる、と。

まぁ、アシュトーリアさんの要求は、『SiV』にとってはそれほど重要ではないはずだ。

『青薔薇連合会』は、アシスファルト帝国との取り引きは多くないから。

しかしウィンクロース家の突然の介入は『SiV』にとって痛手だった。

資金援助を止められた上、取り引き先も商売をしてくれないとなれば、『SiV』はやっていけない。

何処の組織や企業も、元手がなければ成り立たない。

それは『青薔薇連合会』だって同じだ。

ようやく手中に入れた『青薔薇連合会』のアシスファルト支部だが、その為に組織全体の屋台骨が倒れるとなれば、最早それは腐った林檎も同然だった。

思ったよりもあっさりと、『SiV』は諦めた。




俺がアシスファルト帝国に渡って五日ほどで、アイズレンシア含む出張組はルティス帝国に帰還した。