The previous night of the world revolution

ここで問題になるのは、俺が何処まで話すか、についてだ。

彼女が俺について知っているのは、俺が「帝国騎士団の隊長である」ということのみ。

名前すら知らないし、勿論今は『青薔薇連合会』の幹部であるということは知らない。

そもそも彼女はルティス帝国の情勢にも詳しくはない。

それはつまり。

…いくらでも、でっち上げることが出来るという訳だ。

まず、俺がマフィアにいることは伝えない方が良いだろう。

何故そうなったのか、経緯を伝え出すと切りがないし。

俺が今や「悪」の方にいると知れば、彼女は俺に協力することを躊躇する恐れがあった。

だから。

「帝国騎士としてのお仕事ですよ」

今だけ。

忌々しいことではあるが、俺は今だけ、帝国騎士団四番隊隊長に戻ることにした。

アシスファルト帝国でぬくぬくと温室生活をしている彼女には、どうせ真実など調べる術もなかろう。

「そうなの…。忙しいのね」

「えぇ、まぁ」

俺はにこやかに誤魔化した。

奴らが忙しいのかどうかなんて、今はどうだって良い。

精々オーバーワークで過労死すれば良いのだ、あいつらは。

「今、アシスファルト帝国の裏社会が荒れているそうじゃないですか。その関係で、俺が派遣されたんです」

「?どうしてアシスファルトの問題に、ルティス帝国のあなたが?」

「ルティス帝国に本部がある非合法組織のアシスファルト支部が、その争いに巻き込まれたんです。それが結構な規模で、自分達だけでは対処しきれないとヘルプが来まして」

「…でも、あなたは帝国騎士団でしょう?どうして非合法組織の争いに介入するの?他国で潰し合うなら、願ったり叶ったりじゃないの?」

この女、どうやら何も知らないようだな。

事情を何も分かっていない。

それで良いのだ。俺が言うことを何でも鵜呑みにしてくれることだろう。

下手に何か知恵をつけられても困るからな。

「これがそうでもないんですよ。裏社会というのは、表社会と同じくらい帝国民の生活に根付いていますからね。増え過ぎても困りますけど、減り過ぎても困るんです。だから、ある程度援助も必要なんですよ」

「…そうなの…」

それは知らなかった、という顔だ。

いい感じだ。俺の言うことを順調に信じてるな。

「今回アシスファルト帝国の裏社会争いに巻き込まれたのが、ルティス帝国でも有数の組織でして…。彼らから内密にヘルプが来まして、それで俺が自ら足を運んだという訳です」

「そう…。大変なのね」

これが、俺の口から出た出任せだとは気づかないんだろうなぁ。

そもそもこれが本当だとして、そんな話を部外者であるシャリヤなんかに話すはずがない。

それだけ自分が信用されていると思ってるのか?おめでたいことだな。

馬鹿で助かる。

「でも、これが大変なんです。今回の件、どうにも根が深くて…。俺もアシスファルト帝国のことは詳しくないですからね。手を出そうにもなかなか…」

憂いを帯びた表情で俯くと、シャリヤは心配そうな顔をした。

「協力してくれる後ろ楯でもあれば、話は違うんでしょうけど…」

「私で良ければ、力になるわ」

俺が望んでいる言葉を、彼女はあっさりと口にした。