彼女は俺を、応接間に通してくれた。
使用人達は、見慣れぬ来訪者に眉を潜めていたが、シャリヤは気にしなかった。
簡単な世間話をしてから、彼女の近況について、俺はそれとなく尋ねてみた。
以前彼女は、政略結婚という自分の運命を酷く疎んでいた。
あれからどうなったのか、今はどう過ごしているのか、彼女の気を悪くしないよう慎重に尋ねたのだが。
もしかしたらあのときみたいに、また涙ながらに自分の運命を呪うかもしれない。
けれど。
彼女から出てきたのは、権力に巻き込まれることへの嘆きではなく。
「全く、私の主人と来たら…ちっとも頼り甲斐がないのよ。いつもびくびくして、人の意見に流されてばかり。少しは自分で決められないのかしら」
「あぁ…そういう男性いますよねぇ」
「女の私に対してもいつも低姿勢なのよ。何でもかんでも命令してくる人も嫌だけど、あれじゃお人形だわ」
…何と言うか。
井戸端会議で亭主の悪口を溢す、熟年の奥様みたいになっているな。
うんざりした様子ではあったが、どうしてもそれが辛くて耐えきれない、という訳ではなさそうだった。
話を聞くに、彼女の夫は、あまり自己主張をするタイプではないらしい。
周りの顔色を伺い、波風を立てないよう他人の言われるままに行動する、気の弱い人間なのだとか。
まぁ、それも世渡りの方法の一つではあるが。
彼女はそんな夫を、どうにも頼りないと思っているらしかった。
とはいえ、頼りないとは思いながらも、その分自分に命令してきたり、強引に言うことを聞かせようとしたりと、そういう横暴さが全くない辺りは、やりやすいと思っているようだ。
恋愛結婚でない分、お互い干渉は控えましょうね、という暗黙の了解があり。
向こうも周りに勧められた政略結婚である為、シャリヤ自身には特に愛情はないらしく。
むしろ女性は苦手なそうで、伴侶となったのに、今でもほとんど接触はないそうな。
ただ義務として時折共に夜を過ごしはするけれど、彼は下手くそだし、愛がないからお互い分かち合うものも何もないらしく。
結婚して二年近くにもなるのに、子供もまだいないそうな。
そんな愚痴じみた話を、シャリヤはとうとうと語ってくれた。
成程。つまり亭主とは上手く行っていないのだな。
まぁ元々お互い愛のない政略結婚だ。上手く行く方が珍しいだろうけど。
俺にとっては、非常に都合が良い。
「…ところで、ルシファー様は、どうしてまたアシスファルト帝国に?」
自分の愚痴を一通り話してから、彼女は俺のことについて尋ねてきた。
使用人達は、見慣れぬ来訪者に眉を潜めていたが、シャリヤは気にしなかった。
簡単な世間話をしてから、彼女の近況について、俺はそれとなく尋ねてみた。
以前彼女は、政略結婚という自分の運命を酷く疎んでいた。
あれからどうなったのか、今はどう過ごしているのか、彼女の気を悪くしないよう慎重に尋ねたのだが。
もしかしたらあのときみたいに、また涙ながらに自分の運命を呪うかもしれない。
けれど。
彼女から出てきたのは、権力に巻き込まれることへの嘆きではなく。
「全く、私の主人と来たら…ちっとも頼り甲斐がないのよ。いつもびくびくして、人の意見に流されてばかり。少しは自分で決められないのかしら」
「あぁ…そういう男性いますよねぇ」
「女の私に対してもいつも低姿勢なのよ。何でもかんでも命令してくる人も嫌だけど、あれじゃお人形だわ」
…何と言うか。
井戸端会議で亭主の悪口を溢す、熟年の奥様みたいになっているな。
うんざりした様子ではあったが、どうしてもそれが辛くて耐えきれない、という訳ではなさそうだった。
話を聞くに、彼女の夫は、あまり自己主張をするタイプではないらしい。
周りの顔色を伺い、波風を立てないよう他人の言われるままに行動する、気の弱い人間なのだとか。
まぁ、それも世渡りの方法の一つではあるが。
彼女はそんな夫を、どうにも頼りないと思っているらしかった。
とはいえ、頼りないとは思いながらも、その分自分に命令してきたり、強引に言うことを聞かせようとしたりと、そういう横暴さが全くない辺りは、やりやすいと思っているようだ。
恋愛結婚でない分、お互い干渉は控えましょうね、という暗黙の了解があり。
向こうも周りに勧められた政略結婚である為、シャリヤ自身には特に愛情はないらしく。
むしろ女性は苦手なそうで、伴侶となったのに、今でもほとんど接触はないそうな。
ただ義務として時折共に夜を過ごしはするけれど、彼は下手くそだし、愛がないからお互い分かち合うものも何もないらしく。
結婚して二年近くにもなるのに、子供もまだいないそうな。
そんな愚痴じみた話を、シャリヤはとうとうと語ってくれた。
成程。つまり亭主とは上手く行っていないのだな。
まぁ元々お互い愛のない政略結婚だ。上手く行く方が珍しいだろうけど。
俺にとっては、非常に都合が良い。
「…ところで、ルシファー様は、どうしてまたアシスファルト帝国に?」
自分の愚痴を一通り話してから、彼女は俺のことについて尋ねてきた。


