The previous night of the world revolution

横領している証拠を掴めたので、部下の者に後処理をさせました、と報告すると。

アシュトーリアさんは、満足そうに微笑んだ。

「ありがとう、シュノ、ルレイア。ご苦労だったわね」

「いえ、いつも通り、ただ相手の女と寝ただけですから」

いつものお仕事と大差ない。俺の専売特許みたいなものだ。

まぁ、ガードが固かったからいつもよりは少し神経を使ったけど。

何しろ俺は最近機嫌が良いから、このくらいの仕事は何でもない。

「アイズもいたら、皆で一緒にご飯でも食べに行くのに…。残念だわ。アイズ、早く帰ってこないかしら」

アシュトーリアさんはしょぼん、として言った。

「あはは…。確か帰国するのは来週でしたよね?」

「そうなのよ。やっぱり、行かせなきゃ良かったかしら。もっと下の者を行かせるべきだったわ」

「仕方ないですよ。向こうのマフィアとの会合で、アシュトーリアさんの代理なんですから…。幹部クラスじゃないと務まりませんよ」

アイズは今回、隣国アシスファルト帝国の非合法組織との会合に赴いている。

幹部クラスでもないと、こなしきれない仕事だ。

特にアイズは幹部の中で最も昔から『連合会』にいて、アシュトーリアさんの近くにいたのだから。

アシュトーリアさんの代理を務めるのに、アイズ以上の適任はいない。

「そうね、仕方ない…。分かってるけど、やっぱり寂しいわ」

一番長く傍にいたからこそ、アイズがいないと寂しいんだろうな、アシュトーリアさん。

せめて今日、良い報告を持ってくることが出来て良かった。

「…それにしても、ありがとうね、ルレイア。調査を始めてから、なかなか進展がなくて…。あなたに協力をお願いして良かったわ」

アシュトーリアさんは改めて、俺に向かってそう言った。

「礼には及びません。仕事ですしね」

「シュノも。大変だったわね、ありがとう」

「は、はい…」

ちらりと横を見ると、シュノさんは浮かない顔で俯いた。

…?

「それじゃ、今日はもう暇を出すから、それぞれリフレッシュしてちょうだい」

「本当ですか?ありがとうございます」

思わぬ臨時ボーナスだ。

エリュシアでも伴って、新しい香水買いに行こうかなぁ。

オーダーメイドの。オリエンタルな香水。

わくわくしながら、俺はアシュトーリアさんに挨拶をして、彼女の執務室を出た。