The previous night of the world revolution

「あぁ、そうだ」

大事なことを一つ思い出した。

そういえばこいつらは、自決するのが大好きな連中なんだった。

今こいつに死なれたら困るなぁ。

一応、釘を刺しておくとするか。

「自決したいならご自由にどうぞ。生きるも死ぬも、あなたの自由ですからね」

にこ、と笑いながら言って、その次の瞬間、俺は絶対零度の眼光を向けた。

「…それが出来ると思ってるならな」

自決出来るものなら、してみろ。

その結果残された者がどうなるか、こいつも人並みに想像力があるなら分かるだろう。

「…」

怯えた目で、真一文字に口を閉じていたエーデルガルトは、そろそろ面倒臭くなってきたので指でも落とそうかと思っていたところで、口を開いた。

「…分かった。話す。話すから、部下を殺すのはやめてくれ」

「それはあなた次第です。さっさと喋ればさっさと解放してあげますよ」

俺だって鬼や悪魔ではないのだから。人殺しを楽しんでいる訳ではない。

「で?自分が野良犬だってことを認める訳ですか?」

「…あぁ」

「へぇ」

俺は拳銃の銃床で、エーデルガルトの顔を殴り付けた。

頬骨が砕ける音が生々しく聞こえた。

床に倒れ伏した男の顔を靴底で踏みつけ、土下座させるように額を床に擦り付けさせる。

「なら、自分の立場は分かってるな?」

「…はい」

そりゃ何よりで。

「今ので殺さなかったことに感謝しろ。こちらも仲間が何人も殺されてるんでね」

「…」

あ、やっぱり腹立つ。

とりあえず全部吐くまでは今ので済ませようと思っていたけど、やっぱり済ませられそうにない。

床に貼り付く髪を持ち上げ、さっきとは反対の頬を銃床で殴り付ける。

これで左右対称。シンメトリーって素晴らしい。

端正な顔があっという間にめちゃくちゃだ。

何歳なのか知らないけど、この年で総入れ歯はきついだろうな。

…まぁ、生きて帰れたら、の話だけど?

「おい、ルレイア。殴るのは良いが殺すなよ。そいつにはまだ喋ってもらわなきゃならないことがあるんだから」

たった二発殴っただけなのに、ルルシーからのストップが入った。

…仕方ない。不本意だが、ルルシーの言う通りだ。

うっかり気絶でもされたら、起こすのが面倒だ。

「そんじゃさっさと話してください。あなた達に餌付けをした馬鹿は、何処の誰なのか」

「…」

人の質問を無視して骨が砕かれる痛みに悶絶しているアホに、俺もイラッ、と来た。

さっさと喋れって言ってるのに、言うことを聞かない。

腹が立つから、脇腹を思いっきり蹴り上げてみた。

面白いように吹っ飛んだ身体が、壁にぶつかって転がった。

「ルレイア。殺すなって言ってるだろ」

「あぁそうだ。済みませんちょっとイラッとして」

いけないいけない。ルルシーに怒られてしまう。

「ルルシーに怒られるから早く話してくださいよ」

「う、うぅ…」

「じゃあ頷くだけで良い。帝国騎士団ですか?」

苦しげに上半身を起こそうとするエーデルガルトは、確かに頷いた。

…成程。

「…へぇ。やっぱりあいつらなんだ…」

かち、と。

俺の中で、何かのスイッチが入った。

瞬間、室内に何かが破裂でもするかのような破壊音が響いた。

…なんのことはない。俺がデスクを思いっきり殴り付けた音である。