The previous night of the world revolution

幸いなことに、最上階に着くまで、もうまとまった構成員とは遭遇しなかった。

元々『厭世の孤塔』は、少数精鋭だからな。『青薔薇連合会』ほど大所帯じゃない。

まぁ、その精鋭とやらも、俺達幹部にとっては雑兵と変わらないけど。

「ここが、最上階か」

「そんじゃまぁ、さくっと終わらせますか~」

最上階。重厚そうな扉を守る護衛隊員を撃ち殺し、俺とルルシーは、手榴弾で壁を爆破してその部屋に入った。

中央のデスクに座るのは、『厭世の孤塔』首領、エーデルガルト・シュタイン。

さすがに、顔面蒼白であった。

「どうもどうも。夜分にお邪魔して済みませんねぇ。寝てました?起こしちゃいました?」

敵組織とはいえ、同業者には違いない。ファーストコンタクトでもあることだし、ここは和やかに挨拶すべきだと、俺はにこにこと微笑みながら、デスクに歩み寄った。

「初めまして、挨拶の前に爆弾投げちゃいましたけど、私、『青薔薇連合会』の幹部で、ルレイア・ティシェリーと言う者ですが。実は今回の件でMVPを目指してる者でもあるんですが」

「要らんことまで言わんで良い」

俺の後ろで周囲を警戒しながらも、ルルシーは突っ込みを忘れていなかった。

「ところであなた、エーデルガルトさんですよねぇ?」

「…そ、そうだ」

年若い青年は、震え声で頷いた。

…へぇ。

「実はお聞きしたいことがあるんですけど、良いですかね?」

「…」

「最近我々の庭に、土足で踏み入って荒らしていく糞みたいな野良犬がいてですねぇ。ほとほと困ってるんですよ。あなたも遭ったことあります?野良犬。あれ面倒臭いですよね」

「…」

「しかも数時間前、今度は家の中にまで入ってきて荒らしていったそうじゃないですか。これはもうとんでもない野良犬だ…。そう思ったもので我々、その野良犬を取っ捕まえて、保健所で殺処分してもらおうと思うんですよね」

迷惑な野良犬を保健所に連れていくのは、至極当然のことだろう。

だから。

「…その『野良犬』が何処の誰なのか、ご存じですかね?」

凍りつくような眼光を向け、低い声で尋ねると、『孤塔』のボスは恐怖に染まった顔をしながら、答えようとした。

「わ、我々は…」

「んで、その野良犬にはどうやら、エサをやる人間がいるそうなんですよね」

問題なのはその点だ。

野良犬も厄介だけど、もっと厄介なのは、その犬に餌付けをする馬鹿。

「野良犬に餌付けはいけませんよって、その人にも『注意』してあげなきゃいけないので…。教えてくれませんかね?うちの縄張りに手を出した馬鹿共が、何者なのか」

「…そ、それは…」

「喋りたくないなら、大丈夫ですよ。ちゃんと喋りたくしてあげますからね」

銃口を彼のこめかみに当てて、俺は人の良い笑顔を浮かべた。

人間はやはり、笑顔を失ってはいかんよなぁ。

だからいかなるときも、人と付き合うときは笑顔を心掛けましょう。

特に人を脅迫するときなんか、笑顔は最高の交渉材料である。

人生の教訓だから、覚えておくことをお勧めする。

…まぁ、使う機会があるかは分からないけど?