The previous night of the world revolution

襲撃から、およそ二時間後。

しんと静まり返った『厭世の孤塔』本部ビルの正面入り口は、派手な破壊音と共に見る影もなく粉砕された。

侵入者を告げるアラートが建物中に喧しく鳴り響いた。

「ちょっと、お邪魔しまーす」

「玄関ぶっ壊しといてお邪魔します、はないだろ」

「いやいや、ルルシー。礼節は大事だよ。そんな訳で、侵入します」

「三人共、真面目にやらないと」

はい、ごめんなさい。

いやいや、シュノさんの言う通り真面目にやるのも大切なんだけど。

でも折角の敵地制圧なんだから、テンション上げていきたいところだ。

『いやぁ、良いねぇ。視界超良好だぜ。今なら、ルレ公のお肌の毛穴まで見えそうだ』

ほら、ヘッドセットから聞こえるアリューシャも、この軽口である。

「俺に毛穴はないですよ。ちゃんとお手入れしてますからね?乙女の嗜みですよ」

『ほぉ?じゃあ確かめてみるとしようか』

「おい、アリューシャ。ルレイアの毛穴は良いから、ちゃんと誘導しろ」

『アイアイサー』

俺の毛穴も大切なことだと思うんだけどなぁ。

まぁ、俺の美肌の秘訣を語るのは後日ということにして。

『おぉ、いるいる。うじゃうじゃ来てるよ。そこから右にぐいっと曲がって。エレベーター使えねーから階段な。ファイト!』

ファイトって。自分は動かないから他人事だと思って。

どうせ目標は最上階なんだろう?ここ何階建てだよ。階段オンリーはきついな。

「辛い。ルルシー、おぶってくれたりしません?」

「自分で走れ。帝国騎士官学校時代の25キロ長距離走よりましだろ」

「確かに」

あれと比べたら階段ダッシュも余裕でクリア出来そうな気がする。経験って凄いなぁ。

それじゃまぁ、走らせてもらうか。

「…その前に邪魔者を排除しますか」

俺は振り返って、銃を向ける『厭世の孤塔』の構成員を撃ち殺そうとした。

…しかし、俺が引き金を絞る必要はなかった。

その前に、そいつは脳漿を散らして床に貼り付いていた。

アリューシャの、長距離狙撃である。

『ビンゴ!良いねぇ。今日のアリューシャ調子良いよ。フルコンボ狙えちゃうんじゃね?』

アリューシャは口笛を吹きながら、迫ってくる敵を正確に撃ち抜いていった。

さすがだ。

これなら俺達は、当分交戦せずに上まで行けそうだ。