The previous night of the world revolution

ほとんど出会い頭に図星を突かれたルキハが、そのとき何を考えていたのか。

後で聞いたところによると、殺そうかと思ったらしい。

まさか俺も、目の前の相手が殺意を覚えているとは思わなかった。

「…どうしてそう思う?」

幸いと言うべきか、ルキハはそのとき、俺を殺さなかった。

殺さない代わりにそう尋ね返してきた。

質問を質問で返すか。

「作り笑いしてるから」

「そんなに分かりやすいか?」

「いや、分かりにくいと思いますよ。及第点じゃないですか」

少なくとも、俺以外の人間を全員騙すくらいには上手だ。

「でも、お前に通用しなかった」

「…」

「それじゃ意味がない。一人でも見抜く奴がいるなんて、想定外だ」

それはそれは。

残念でしたってことだ。

「帝国騎士官学校の連中なんて皆馬鹿だと思ってたんだけどな…」

ルキハのその台詞を、教官達が聞けば卒倒するだろうな。

「…まぁ、皆馬鹿なのは確かだと思いますけど」

事実、ルキハの演技に気づかなかったくらいには馬鹿だ。

「…お前、名前は?」

「…」

「名前は何て言うんだ」

「…ルシファー」

「名字を聞いてんだ、名字を。貴族なんだろ?」

その名字を言いたくないから、先に名前を言ったのに。

「…ウィスタリア」

隠していてもどうせばれる。なら、黙っていても仕方なかった。

「ウィスタリアだと…?名門貴族じゃないか。そんな奴が騎士官学校の連中を馬鹿呼ばわりとは」

「自分が先に言ったんじゃないですか」

「俺は今にも潰れそうな弱小貴族だからな」

「…それで?」

「ん?」

こんな不毛な会話には、興味がないのだ。

「質問の答えを聞いてませんけど。演技してた理由は何ですか」

「あぁ、お前の予想通りだ。嫌われたくないからだよ」

「…」

…案外。

案外、つまらない理由なんだな。

実際、それは本当のことだった。

でもルキハが演技をしていたのは、もっと壮大なことを隠す為だったのだと、俺はもっと後になって知ることになる。