The previous night of the world revolution

「シュノさん、どうかしました?」

最近のシュノさんは、髪は綺麗にセットされているし、着ている服のセンスも良い。

何故なら、俺が毎日彼女の髪をセットし、ついでにコーディネートも考えてあげているからである。

もう上司、部下という関係ではないが…家族であることには変わりないからな。

さて、それはさておき。

「あの…。ちょっと…その」

シュノさんは、もじもじと俯いて、両手を後ろに回していた。

…?

何か伝えたいことがあるのは分かるが、もじもじされているだけだと伝わってこない。

困ったな…どうしようか。

「シュノさん…?」

「…」

「…えと。何でも言ってください。俺に出来ることならやりますから」

家族の為の骨折りなら、苦労にもならない。

そう思って言うと、シュノさんは観念したかのように、後ろに回していた手をそっと前に持ってきた。

彼女は両手の手のひらで包み込むように持っていたものを、そっと見せてくれた。

シュノさんの手のひらの上には、丸くて小さな、つぶらな瞳をした小動物がいた。

…さすがの俺も、これには驚いた。

「これ…」

俺の記憶が正しければ…これは確か、ハリネズミ?

「ハリネズミですか…?」

「うん…」

シュノさんの手のひらの上にいるハリネズミは、くりくりした目でこちらを見ながら、ぴーぴーと鳴いた。

ハリネズミなんて、初めてこんなにまともに見た。

「これ、どうしたんですか…?」

「…」

「拾ってきた…訳じゃないですよね?」

犬猫じゃないのだから、「誰か拾ってください」と段ボールに入れられていた訳でもないだろう。

「買ってきたんですか?」

「…ううん」

「じゃあ、どうしたんですか」

「…先日、『厭世の孤塔』の一派と小競り合いになったでしょう?」

『厭世の孤塔』とは、ルティス帝国の非合法組織の一つである。

『青薔薇連合会』ほどの組織力はないが、やり口は俺達より凶悪だとして恐れられている。

いや、恐れてるのは一般人だけで、俺達『連合会』の人間はさして恐れてはいないが。

その『厭世の孤塔』と、俺達『青薔薇連合会』は先日、ちょっとした小競り合いを起こした。

お互い末端の部下同士の衝突だが、双方数名の死者が出た。

この程度のいさかいは、裏社会では珍しいことではない…むしろ、日常茶飯事なくらいだ。

一応、事を収める為にアシュトーリアさんが『孤塔』のボスと電話で話をつけ、事件は収束したのだが…。

「その件と、このハリネズミと、何の関係が?」

「あの事件で死んだ部下が、私の麾下の人間で」

「あ、そうなんですか…。それはご愁傷様です」

幸いと言って良いものか、俺の麾下では犠牲者はなかった。

そうか。シュノさんの部下が。

「残された家族に遺品を届ける為に、その人の家を片付けに行ったら…この子がいて」

「成程…」

じゃあそのハリネズミのご主人は、亡くなったシュノさんの部下なのか。

「放っておいたら死んじゃうし、連れてきたんだけど…」

「…」

「…私、ハリネズミってどう飼えば良いのか分からない…」

「…それで俺にヘルプを求めに来たと?」

シュノさんは、顔を赤くしてぷいっ、とそっぽを向いた。

どうやら、図星であるらしい。