The previous night of the world revolution

…おやまぁ。なんともこれは。

いかにも、なシチュエーションではないか。

男達は、たった一人の女性を取り囲むようにして迫っていた。

所謂、超強引なナンパという奴だ。

ナンパと言うよりは…脅迫かな?

女性はいかにもひ弱そうなのに対し、男達の方はいずれも屈強で、体格も大柄。普段の俺の三倍はチャラそうな身なりをしていた。

このまま放っておけば、女性は間違いなく、無理矢理男達に連れていかれてしまうことだろう。

全く気の毒なことだ。

俺は黙ってその場を立ち去れば良い。もう正義の帝国騎士ではないのだから、放っておけばいいのだ。触らぬ神に祟りなし。あんな連中と、わざわざ関わる必要はない。

あの女性が連れていかれようと、レイプされようと、俺の知ったことではなかった。

…けれど。

自然と、俺の足は動いていた。

「はいはい、ちょっと。やめましょうよそういうことは」

俺は揉めている男女の間に割って入った。

庇うように女性の前に立つと、後ろから息を飲む音がした。

どうやら気づいてくれたらしい。

「…何だ?お前。邪魔すんなよ」

ナンパ男は、ドスを効かせて俺に凄んだ。

が、残念ながらこんな三下がいくら凄んだところで、怖くも何ともない。

「良くないですよ、一人の女性に寄って集って、なんて。やめましょう?」

「お前には関係ないだろ」

仰る通り。

けれども、ここで引く訳にもいかないのだ。

「…じゃあ、どうします?やります?」

一瞬、だけ。

一瞬だけ、俺は殺気を滲ませた鋭い眼光を、彼らに向けた。

それだけで、三下達には充分だった。

彼らはぞっとしたような顔になり、二歩、三歩と後ずさった。

「さっさとお家に帰ってください。その方が身の為ですよ?」

「…」

にこりと笑って言うと、ナンパ男達は、怯えて逃げていった。

…まぁ、俺に立ち向かう勇気なんてないよなぁ。

さて、暴漢を追い払ったところで…。

「…ルシファー様!」

女性…リーフリル・アイリアル・ヴェルヴィットは、俺にすがるように抱きついた。