『緩い』スタートから入った幹部会議であるが、その内容はあまり緩くはなかった。
むしろ、かなりハードなものだった。
アイズレンシアことアイズが報告したのは、とある傘下組織の窮地について。
今度は、裏切りではない。
その名前は『RHC』社というが、その企業は『青薔薇連合会』とかなり親交を深めてきた。
アシュトーリアさんに直々に会ったこともあるらしい。
マフィアと繋がっているのだから、綺麗な企業ではない。
『RHC』は表向きは中規模のIT企業だが、その裏では、密造した銃器を外国から密輸し、それを『連合会』含む裏社会で売り物にすることを生業としていた。
『連合会』とも長い付き合いで懇意にしていたが、最近になって、彼らはピンチを迎えているそうだ。
何でも、帝国騎士団に目をつけられたらしい。
何かへまをして尻尾を掴まれたか、あるいは帝国騎士団が重い腰を上げたのか。
いずれにしても彼らは今、軽く存亡の危機を迎えていると。
「どうしますか?このまま放置して、彼らと縁を切りますか?それとも助けますか?」
アイズはアシュトーリアさんに指示を仰いだ。
「そうね…。見捨てるには惜しいわね。それに、助けたらその分、恩を売ることが出来るでしょう?」
確かに、それは大きなメリットではあるが。
同時に危険な賭けでもある。
「帝国騎士団を相手にするのは、それなりに面倒ですよ」
忌々しい組織ではあるが、権力だけは持っている組織だ。
あの糞みたいなオルタンスがいる限り、帝国騎士団は一筋縄では行かない。
「あなたは勿論、それについては分かってるわね」
「伊達に帝国騎士をやってませんでしたからね」
…ちなみに。
俺は『青薔薇連合会』に加入するに当たって、俺が知る全ての帝国騎士団についての情報を、アシュトーリアさんに献上している。
それが『連合会』に加入する条件でもあったし、それが出来なければ俺に存在価値はなかった。
罪悪感など当然、欠片も感じていない。何度も言うが、先に裏切ったのは向こうだ。
とにかく、帝国騎士団がもし本気なら、敵対するのは骨が折れる。
『RHC』が帝国騎士団に捕まれば、こちらは大損害だ。俺達に類が及ばないように彼らとの繋がりをなかったことにする必要があるし、それには多大な根回しと労力を要する。
ついでに、俺達はずっと彼らを贔屓にしてきたから、その分他より安く武器弾薬を買うことが出来ていた。それがなくなるとなれば、溜め息の一つも出るというものだ。
だから、出来ることなら助けたい。そして恩を売りたい。
しかし、そう簡単にはいかない。
「問題は、帝国騎士団が何処まで『RHC』について掴んでいるのかね。目的は『RHC』を取り締まることだけなのか、それとも裏社会全体をターゲットに入れているのか…」
裏社会全体をターゲットに入れるのは、さすがの帝国騎士団でも容易ではない。
だから、その可能性は薄いとは思うが…。ゼロではない。
「…こんなときに、俺がまだスパイだったらな…」
ルルシーは溜め息混じりにそう言った。
確かに、ルルシーがまだスパイとして帝国騎士団にいれば、その手の情報はすぐに調査出来たことだろう。だが、今となっては無い物ねだりに過ぎない。
「困ったわねぇ…。どうしようかしら」
アシュトーリアさんは憂いを帯びた表情であった。
帝国騎士団にスパイ、か…。
そのとき、俺はふと、妙案を思い付いた。
むしろ、かなりハードなものだった。
アイズレンシアことアイズが報告したのは、とある傘下組織の窮地について。
今度は、裏切りではない。
その名前は『RHC』社というが、その企業は『青薔薇連合会』とかなり親交を深めてきた。
アシュトーリアさんに直々に会ったこともあるらしい。
マフィアと繋がっているのだから、綺麗な企業ではない。
『RHC』は表向きは中規模のIT企業だが、その裏では、密造した銃器を外国から密輸し、それを『連合会』含む裏社会で売り物にすることを生業としていた。
『連合会』とも長い付き合いで懇意にしていたが、最近になって、彼らはピンチを迎えているそうだ。
何でも、帝国騎士団に目をつけられたらしい。
何かへまをして尻尾を掴まれたか、あるいは帝国騎士団が重い腰を上げたのか。
いずれにしても彼らは今、軽く存亡の危機を迎えていると。
「どうしますか?このまま放置して、彼らと縁を切りますか?それとも助けますか?」
アイズはアシュトーリアさんに指示を仰いだ。
「そうね…。見捨てるには惜しいわね。それに、助けたらその分、恩を売ることが出来るでしょう?」
確かに、それは大きなメリットではあるが。
同時に危険な賭けでもある。
「帝国騎士団を相手にするのは、それなりに面倒ですよ」
忌々しい組織ではあるが、権力だけは持っている組織だ。
あの糞みたいなオルタンスがいる限り、帝国騎士団は一筋縄では行かない。
「あなたは勿論、それについては分かってるわね」
「伊達に帝国騎士をやってませんでしたからね」
…ちなみに。
俺は『青薔薇連合会』に加入するに当たって、俺が知る全ての帝国騎士団についての情報を、アシュトーリアさんに献上している。
それが『連合会』に加入する条件でもあったし、それが出来なければ俺に存在価値はなかった。
罪悪感など当然、欠片も感じていない。何度も言うが、先に裏切ったのは向こうだ。
とにかく、帝国騎士団がもし本気なら、敵対するのは骨が折れる。
『RHC』が帝国騎士団に捕まれば、こちらは大損害だ。俺達に類が及ばないように彼らとの繋がりをなかったことにする必要があるし、それには多大な根回しと労力を要する。
ついでに、俺達はずっと彼らを贔屓にしてきたから、その分他より安く武器弾薬を買うことが出来ていた。それがなくなるとなれば、溜め息の一つも出るというものだ。
だから、出来ることなら助けたい。そして恩を売りたい。
しかし、そう簡単にはいかない。
「問題は、帝国騎士団が何処まで『RHC』について掴んでいるのかね。目的は『RHC』を取り締まることだけなのか、それとも裏社会全体をターゲットに入れているのか…」
裏社会全体をターゲットに入れるのは、さすがの帝国騎士団でも容易ではない。
だから、その可能性は薄いとは思うが…。ゼロではない。
「…こんなときに、俺がまだスパイだったらな…」
ルルシーは溜め息混じりにそう言った。
確かに、ルルシーがまだスパイとして帝国騎士団にいれば、その手の情報はすぐに調査出来たことだろう。だが、今となっては無い物ねだりに過ぎない。
「困ったわねぇ…。どうしようかしら」
アシュトーリアさんは憂いを帯びた表情であった。
帝国騎士団にスパイ、か…。
そのとき、俺はふと、妙案を思い付いた。


