はっきり言うが。

俺のマフィアでの仕事は、主に色仕事であった。

何故そうなったのかという経緯を辿れば、それはルルシーからの過去の告白にある。









俺がマフィアに入ってすぐの頃、ルルシーは自分の過去について俺に話してくれた。

母親に虐待されていたこと。その後入った孤児院で辛い目に遭ったこと。孤児院を抜け出した後は男娼をやっていたことも。

思い出したくもないであろう過去を、ルルシーは俺に語ってくれた。

それは、何よりの信頼の証だった。

聞くに堪えない辛い話であったが、俺は彼がそれを話してくれたことが嬉しかった。

ルルシーが何故『青薔薇連合会』にいるのかを含め、俺はようやく、彼のルーツを知ることが出来た。

「…汚らわしいと思ったか?」

「…何がですか」

話し終えた後、ルルシーは真っ先に俺にそう尋ねた。

「身体を売り物にして生きていた俺が」

「あなたは自分を卑下する必要は全くない。あなたはただ、そうしなくては生きていけなかったからそうしただけで、俺のように自ら悪に手を染めた訳じゃない」

彼にはマフィアに入った同情に値する理由があるが、俺にはない。

ルルシーは身体を売ったりマフィアに入ったのは、そうしなきゃ生きていけなかった。でも、俺がマフィアに入ったのは復讐の為だ。

動機がまるで違う。

「…でも、あなたは自分が汚らわしいことをしたと思ってるんですね」

「…」

「成程。分かりました…。じゃあ、俺も同じことをしましょう」

「は?」

「あなたと同じになる。あなたと組織の為になるなら、身体でも何でも売りましょう」

今更惜しむものなど、何一つありはしない。

だがルルシーは、酷く反対した。お前が無理にそんなことをする必要はない、と。

「別に無理なんてしてませんよ。破滅願望ももうないですし。仕事と割り切ればそのくらい」

手段としてアシュトーリアさんがあまり好まないだけで、その手の仕事はいくらでもある。肉欲というのは、人間が生きている限り切っても切り離せないものだ。

人間の薄暗い本能が渦巻く裏社会では、尚更顕著だ。

「でも、お前がそんなこと…」

「出来ますよ、ルルシー。俺は一度死んだ身なんだから、何だって出来ます」

そして、もう堕ちるところまで堕ちた人間なのだから。

「俺は、あなたと同じところに立ちたい」




そんなやり取りの果てに、とうとうルルシーも折れ。

俺は、色仕事を引き受けるようになった。