The previous night of the world revolution

アシュトーリアさんの執務室を出てから。

俺は、ルルシーに連れられて組織全体に加入の挨拶をした。

ルルシー含む幹部組は、俺が元帝国騎士団の人間であることを知っているが。

末端の構成員には、隠していることにした。元帝国騎士がいると知れれば、混乱を招く恐れがあるから、との理由で。

そして、その挨拶の後。




「まさか本当に『青薔薇連合会』に入るとはな~。元帝国騎士団の隊長がマフィア入りなんて、百人力過ぎね?」

入会祝い、と言ってケーキを買ってきて、それをもくもく食べながら、彼はそう言った。

彼の名は、アリューシャ・ヘルフェンリッツ。俺が入院してるときもたまに会いに来てくれていた。

どうでも良いが、俺の入会祝いなのに彼が一番よく食べている。

まぁ、別に構わない。以前はあんなに甘いものが好きだったのに、今ではすっかりどうでも良くなってしまった。何故あんなに砂糖に執着していたのか分からない。

「実力もあるわルル公のお墨付きだわ、出世コースまっしぐらではござらんか」

「ありがとうございます」

別に、出世意欲はないのだが。

位が上になったところで良いことなんて何もないことは、帝国騎士団で痛いほど思い知らされた。

「動機は何にせよ、元気になったようで良かったよ。少し前まで、見ていられなかったもんね」

と、言ったのはこちらもたまに見舞いに来てくれた、ルルシーの同僚の一人。

アイズレンシア・ルーレヴァンツァ。通称アイズ。

子供っぽいアリューシャを見ていると、彼は随分大人びて見える。

「とにかく、私は君を歓迎するよ。私に言わせればね、君は元よりこちら側の人間だ。君のような芯の強い人間は、無能な女王のもとにいても才能を腐らせるだけだ」

「…俺、元々こちら側なんですかね?」

「私に言わせればね」

そうなのか。まぁ、どちらでも良いけど。

今となっては正義も悪も、どちらがどちらかなんて分かったもんじゃない。

「…それより私が気になるのはルルシーだよ。本当にこれで良かったの?」

「良いも何もない。俺はルレイアの所属なんて何処でも良いんだ。ただ、一緒にいられるなら」

ルルシーの答えは、至ってシンプルであった。

彼は、内心俺の『青薔薇連合会』入りを快く思っていないのではないかと思っていたが。

どうやら、もう肝は据わっているようだ。

彼も、生粋のマフィアなのだ。その手の甘さはとっくに捨てている。

そして、甘さを捨てたのは俺も同様だ。その点、アイズの言うように、俺はこちら側の人間なのかもしれない。

「…そういえば、ルレ公は早速幹部候補なんでしょ?」

「あぁ、そうだね」

俺の略称はルレ公なのか、と突っ込む前に。

俺は幹部候補なのか。

「誰の下につくの?やっぱりルル公?」

「いや、シュノだ。さっきアシュトーリアさんが直々にメールを寄越してきた」

…シュノ、という名前は初めて聞いた。

俺の新しい上司は、その人であるらしい。