俺はゆっくりと、時間をかけて…ルルシーに全てを話した。
オルタンスには他言無用と言われたが、最早俺は帝国騎士団の人間ではない。彼の命令を聞く義務はなかった。
ルルシーはあからさまに眉を潜め、不愉快そうに話を聞いていた。
途中、俺は何度も言葉に詰まった。話そうとしていることは頭の中にあるのに、それが上手く言葉にならないのだ。
また、喋ろうとしても声にならなかった。喋らなければ、と思うのにそれが出来なかった。
話したくなかったのではない。
単純に、声を出す労力がないのだ。
ルルシーは恐らく、酷く聞きづらかったに違いない。
けれども、時折補足的に質問する以外は、文句も言わずに聞いてくれた。
女王を庇って怪我をしたこと。真犯人は女王の従兄弟、いや…実は兄である、クリュセイス家の当主であること。
王家の秘密を守る為に、俺が罪を着せられたこと。
その間姉さんは他国に派遣されており、ルティス帝国にはいなかったこと。
真実を知るのはオルタンスと女王と、俺。
それと、今聞いているルルシーだけであること…。
全部話し終えるのに、二時間近くかかった。
「…そうか」
聞き終えて、ルルシーは苦しそうに眉間を押さえた。
後で聞いたところによると、彼はそのとき、酷く怒っていたらしい。
人生においてこんなに怒りを覚えたことはないというくらいに。
殺したいほどに、女王とオルタンスを憎んでいたそうだ。
「…じゃあ、やっぱりお前は冤罪だったんだな」
「…」
俺は小さく頷いた。
そう。俺は冤罪なのだ。本来裁かれるべき人間ではないのだ。
それなのに、何でこんなことになってしまったんだろう?
「…ルルシー」
「何だ」
「…俺は、もう死にたい」
「そうだろうな」
ルルシーに、俺が冤罪であると伝えられただけで充分だ。
「もう、殺し…」
「だが残念だったな。お前は死なせない」
「…」
「俺が、意地でもお前を生かす。本当にお前のことを思ってるなら、殺してやるべきなんだろう。今すぐ解放してやるべきなんだろう。でも死なせない。俺は、絶対にお前を助ける」
…助ける、だって?
「…俺を助けたいなら、今すぐ殺すべきだ」
「そうだな。でも、俺はお前に生きていて欲しいんだ」
「…」
「きっと立場が逆だったら…お前もそうするはずだろ?」
全くもって、その通りであった。
残酷だけれど。それが相手を苦しめるだけだとしても。
でも、生きていて欲しいと思うはずだ。
死んだら、全部終わりなのだから。
「…あなたは、ずるい」
どうして、俺にそんなことを言うのか。
あなたに生きて欲しいと言われたら、生きなきゃ、と思ってしまうじゃないか。
もう生きていたくなんかないのに、まだ生きていなきゃって。
頼むから。俺にもう…生きる理由を、作らないでくれ。
オルタンスには他言無用と言われたが、最早俺は帝国騎士団の人間ではない。彼の命令を聞く義務はなかった。
ルルシーはあからさまに眉を潜め、不愉快そうに話を聞いていた。
途中、俺は何度も言葉に詰まった。話そうとしていることは頭の中にあるのに、それが上手く言葉にならないのだ。
また、喋ろうとしても声にならなかった。喋らなければ、と思うのにそれが出来なかった。
話したくなかったのではない。
単純に、声を出す労力がないのだ。
ルルシーは恐らく、酷く聞きづらかったに違いない。
けれども、時折補足的に質問する以外は、文句も言わずに聞いてくれた。
女王を庇って怪我をしたこと。真犯人は女王の従兄弟、いや…実は兄である、クリュセイス家の当主であること。
王家の秘密を守る為に、俺が罪を着せられたこと。
その間姉さんは他国に派遣されており、ルティス帝国にはいなかったこと。
真実を知るのはオルタンスと女王と、俺。
それと、今聞いているルルシーだけであること…。
全部話し終えるのに、二時間近くかかった。
「…そうか」
聞き終えて、ルルシーは苦しそうに眉間を押さえた。
後で聞いたところによると、彼はそのとき、酷く怒っていたらしい。
人生においてこんなに怒りを覚えたことはないというくらいに。
殺したいほどに、女王とオルタンスを憎んでいたそうだ。
「…じゃあ、やっぱりお前は冤罪だったんだな」
「…」
俺は小さく頷いた。
そう。俺は冤罪なのだ。本来裁かれるべき人間ではないのだ。
それなのに、何でこんなことになってしまったんだろう?
「…ルルシー」
「何だ」
「…俺は、もう死にたい」
「そうだろうな」
ルルシーに、俺が冤罪であると伝えられただけで充分だ。
「もう、殺し…」
「だが残念だったな。お前は死なせない」
「…」
「俺が、意地でもお前を生かす。本当にお前のことを思ってるなら、殺してやるべきなんだろう。今すぐ解放してやるべきなんだろう。でも死なせない。俺は、絶対にお前を助ける」
…助ける、だって?
「…俺を助けたいなら、今すぐ殺すべきだ」
「そうだな。でも、俺はお前に生きていて欲しいんだ」
「…」
「きっと立場が逆だったら…お前もそうするはずだろ?」
全くもって、その通りであった。
残酷だけれど。それが相手を苦しめるだけだとしても。
でも、生きていて欲しいと思うはずだ。
死んだら、全部終わりなのだから。
「…あなたは、ずるい」
どうして、俺にそんなことを言うのか。
あなたに生きて欲しいと言われたら、生きなきゃ、と思ってしまうじゃないか。
もう生きていたくなんかないのに、まだ生きていなきゃって。
頼むから。俺にもう…生きる理由を、作らないでくれ。


