The previous night of the world revolution

結婚。

結婚と言えば…あれですよ。

健やかなるときも病めるときも、互いを愛し敬い尊敬し、支え合って、生涯添い遂げるあれ。

人生のパートナー。配偶者を得ること。

俺にとっては夢の彼方のような出来事で、でも決して他人事ではなく。

なるべく考えないようにして生きてきた。

にしても、結婚だと?

自分と同じくらいの、あるいは少し年下のような子が、結婚というキーワードを口にすると…どうにも。

どぎまぎしてしまうと言うか、え、その若さで?と思ってしまう。

男女で結婚適齢期に差があるということなのか?俺は女性の支援活動に参加してるから、その辺も男女平等であるべきだと主張するが。

アシスファルトでは、一般的に結婚する年齢が若いのだろうか?そこまでは分からないが。

だが、別に年齢はさしたる問題ではない。

あまり若過ぎるのは問題だが、互いに愛し合い、きちんと相談して、二人で決めた結果なら、それは祝福されるべきものだ。

若かろうが年老いていようが、幸せな結婚ならそれで良い。

問題なのは、シャリヤさんのこの顔を見るに…彼女の結婚は、望んでいないものであるということ。

これは大問題だろう。

「…許嫁、か何かですかね?」

「…父上が、勝手に決めてきたの。まだ一度も会ったことのない相手よ」

「…」

それは…きついな。

それはきついよ。

常識的に考えて、一度も会ったことのない異性と結婚しろと言われて、喜ぶ人間がいるとは思えない。

ましてやそんな見知らぬ相手と関係を持たなければならないなんて…想像するだけで怖いだろう。

特に女性は。

俺だって、全く見知らぬ女性と結婚しろと言われたら拒否するに決まってる。

人生がかかってるんだぞ。誰がそんな大博打をしたいことか。

とはいえ…こういうことは、貴族の家では珍しくない。

所謂、政略結婚という奴だ。

姉さんだって、帝国騎士になっていなかったら、このシャリヤさんのように…親の決めた相手と強制的に結婚させられていたかもしれない。

大抵の場合、決定権があるのは男性側だ。男の方はある程度、この女が良いと望むことは出来るが…女性の方は、そうはいかないのが現状。

ルティス帝国では、ウィルヘルミナさんを始め、ルシアナさん達女性活動家の働きによって、そのような人権を無視した結婚は少なくなってきているが…。

…そうか。シャリヤさんは、望まない結婚をさせられる訳か。

そりゃあ、酒に逃げたくもなる。