The previous night of the world revolution

「お水どうぞ。もらってきました」

「…」

外気に当たれば少しは酔いも冷めるだろうと、俺は屋外のテラスに彼女を連れ出した。

更に、コップ一杯の水を彼女に渡した。

コップを受け取った彼女は、しばしそれを眺めた後で…一気に飲み干した。

その間に、俺は紙ナプキンでチョコクリームを拭き取った。

が、やっぱり茶色い染みが出来てしまっている。あーあ…。

これ、クリーニングしたら落ちる範囲?大丈夫?

さすがにこの短期間でもう一度仕立て直したら、仕立て屋さんはきっと、「こいつはすぐ制服を汚して買い換えるから、適当に仕立ててやれ」と手を抜き始めることだろう。

けれども、制服が汚れる原因となった彼女のことを、責める気にはなれなかった。

「…大丈夫です?」

改めて、俺は彼女の顔を見ながら尋ねた。

女性である。女性であるが…どちらかと言うと、まだ少女だ。

俺と同い年…か、少し年下くらいだろうか?

女性に年齢なんて聞けないから、推測するしかないが。

まだ若いのに、こんなにお酒に酔うだなんて、あまり感心しない。

少女は、少し子供っぽい、可愛らしいデザインのドレスを身に付けていた。

一体何処の子だろう?式典に参加しているのだから、それなりの身分なのだろうが。

出来れば、彼女と一緒に来ているであろう引率の方に返してあげたいのだけど…。

「あの…あなた、お名前は?」

「…」

「アシスファルト帝国の方…ですよね?」

それとも、俺みたいによその国から招かれた人?それは分からなかった。

とりあえず、何か返事をしてくれると有り難いのだが…。

「…シャリヤ」

少女は、ぽそっ、と答えた。

「…シャリヤさん?それが名前?」

「…」

こくりと頷く少女。改めてシャリヤさん。

「何処の…家のお方?」

「…アルルイーダ。シャリヤ・アルルイーダ」

アルルイーダと言うと、聞き覚えがあった。

確かアシスファルト帝国でも有数の貴族の名家だ。

結構良いところのお嬢さんであるらしい。人のことは全く言えないけども。

「…そうですか。それじゃあ…ファーストネームで呼ぶのは失礼ですね。アルルイーダ卿」

「…」

「今日はどなたとここに?ご家族か誰か、来ているのなら一緒に探しましょう」

「…帰らない」

「…えっ?」

今、何て?

「…帰らない、もん」

酔っぱらった人間に、関わった結果がこれであった。