俺は寮長に話しに行ったその足で、寮母のもとに向かった。
寮母は学生寮を取り締まるトップだ。学生寮でのことは彼女が総括している。
だから、寮長が話にならないなら、寮母に言うしかない。
けれどこちらも、なかなかガードが固かった。
「…何?」
部屋を訪れた俺に対して、寮母は面倒臭そうに聞いた。
あまり、友好的とは言えない態度だ。
でも、ここですごすご帰る訳にはいかなかった。
「…あの、自分はN室の…一年の者です」
「それが何?」
「室内のことで、相談があって」
「あぁ、それなら室長を通してくれる?原則部屋でのこと室長を通すようにって、規則にあるでしょ?」
そんなことは、分かっているのだ。
でも俺をいじめているのは室長であり、フロア長だ。
どうやって、当事者を第三者として仲介することが出来ようか。
「…室内で、いじめがあるんです」
「は?」
「リーダーは室長です。だから、室長を通すことは出来ません」
そう言うと、寮母は明らかに面倒臭そうな顔をした。
…この時点で、不安がよぎった。
「いじめ…?」
「はい…」
この瞬間は、俺にとってかなり辛かった。
当たり前だろう。自分がいじめられていると認めるなんて、どれだけ惨めなことか。
それでも、言わなければ何も伝わらなかった。
だから言った。俺の言葉に、応えてくれることを願って。
…けれど。
「…それ、あなたの勘違いじゃないの?」
「…は…?」
…今、今…何て?
勘違い、って…?
「何処の部屋でも多少の後輩いびりはあるものよ。それをいちいち騒ぎ立てるなんて、あなたくらいよ」
「多少って…。多少じゃありません。だって、痣があるんです。いくつも…」
何ならこの場で服を捲り上げて見せても良い。自分でも目を背けたくなるほど痛々しい痣が、今朝正に刻み込まれたのだから。
しかし、寮母は聞かなかった。
「そんなことくらいで音をあげてちゃ、ここではやっていけないわよ。いじめられてるなんて、あなたの被害妄想でしょ?」
「そんな…ことは…」
被害妄想?あれが被害妄想?
殴られ、床に引き倒されて頭を蹴られることが、被害妄想?
「とにかく、そんな下らないことで私を煩わせないで。根性が足りないのよ」
寮母はぴしゃりとそう言って、俺を突き飛ばすように追い返した。
…ここは、正義を教える機関じゃなかったか?
国を守り、正し、弱きを助け、悪を排除する、民衆を導く人間を育成する場所ではなかったか?
俺は自分が何処にいるのか、一瞬分からなくなった。
寮母は学生寮を取り締まるトップだ。学生寮でのことは彼女が総括している。
だから、寮長が話にならないなら、寮母に言うしかない。
けれどこちらも、なかなかガードが固かった。
「…何?」
部屋を訪れた俺に対して、寮母は面倒臭そうに聞いた。
あまり、友好的とは言えない態度だ。
でも、ここですごすご帰る訳にはいかなかった。
「…あの、自分はN室の…一年の者です」
「それが何?」
「室内のことで、相談があって」
「あぁ、それなら室長を通してくれる?原則部屋でのこと室長を通すようにって、規則にあるでしょ?」
そんなことは、分かっているのだ。
でも俺をいじめているのは室長であり、フロア長だ。
どうやって、当事者を第三者として仲介することが出来ようか。
「…室内で、いじめがあるんです」
「は?」
「リーダーは室長です。だから、室長を通すことは出来ません」
そう言うと、寮母は明らかに面倒臭そうな顔をした。
…この時点で、不安がよぎった。
「いじめ…?」
「はい…」
この瞬間は、俺にとってかなり辛かった。
当たり前だろう。自分がいじめられていると認めるなんて、どれだけ惨めなことか。
それでも、言わなければ何も伝わらなかった。
だから言った。俺の言葉に、応えてくれることを願って。
…けれど。
「…それ、あなたの勘違いじゃないの?」
「…は…?」
…今、今…何て?
勘違い、って…?
「何処の部屋でも多少の後輩いびりはあるものよ。それをいちいち騒ぎ立てるなんて、あなたくらいよ」
「多少って…。多少じゃありません。だって、痣があるんです。いくつも…」
何ならこの場で服を捲り上げて見せても良い。自分でも目を背けたくなるほど痛々しい痣が、今朝正に刻み込まれたのだから。
しかし、寮母は聞かなかった。
「そんなことくらいで音をあげてちゃ、ここではやっていけないわよ。いじめられてるなんて、あなたの被害妄想でしょ?」
「そんな…ことは…」
被害妄想?あれが被害妄想?
殴られ、床に引き倒されて頭を蹴られることが、被害妄想?
「とにかく、そんな下らないことで私を煩わせないで。根性が足りないのよ」
寮母はぴしゃりとそう言って、俺を突き飛ばすように追い返した。
…ここは、正義を教える機関じゃなかったか?
国を守り、正し、弱きを助け、悪を排除する、民衆を導く人間を育成する場所ではなかったか?
俺は自分が何処にいるのか、一瞬分からなくなった。


