The previous night of the world revolution

俺がリーフリルさんの手を引いて倉庫から出る、数分前。

倉庫の外では、それなりの修羅場があった。

「…もう二時間がたつな」

懐中時計を見ながら、オルタンスは淡々と言った。

「…」

ウィルヘルミナさんも、リーヴァも、気が気でない様子だった。

中でどんな会話が繰り広げられているのか、知らないのだから当然だ。

怒鳴り声はしないから、言い争いになっているという訳ではないのだろうが。

「突入まではせずとも、一度様子を見るくらいは…」

と、リーヴァが提案をしかけた、そのとき。

「どうだ?立てこもり犯の様子は」

背後から、三番隊のアドルファスと、そして姉さんが現れた。

「アドルファス殿、それにルシェ殿も…何故ここに?」

「応援だ、応援。意外に長引いてるようだから茶化しに来た」

手伝いに、ではなく茶化しに、と言うところがアドルファスらしい。

緊急事態のはずなのに、余裕の表情。不謹慎なようにも思えるが、緊迫した現場であればあるほど、彼のように余裕のある人間は貴重だ。

「それに、ルシェの全身から弟が心配だって態度が滲み出てるもんだから。黙って待ってられなかったんだろうよ」

アドルファスはにやにやしながら姉さんをちらりと横目で見たが、姉さんは相手にせず、オルタンスに話し掛けた。

「状況は?」

「未だ変わらず、だ。校舎内から爆弾は見つからなかったが」

「そうか…」

姉さんは辺りをぐるりと見渡して、あることに気がついた。

「…うちの愚弟は何処に?」

「…」

オルタンスは無言で、ウィルヘルミナさんとリーヴァも、そっと視線を逸らした。

実はこの中で犯人と二人きりでお話中ですなんて言われたら、姉さんはどんな反応をするのか。

想像しただけで震えが走るので、ウィルヘルミナさんもリーヴァも、何も言いたくないのだろうが。

「…中だ」

許可を出した張本人である為、オルタンスは逃げようにも逃げられなかった。

「…中?」

「倉庫の中。犯人と二人きりで、説得を試みている」

「…」

「…それも、丸腰でな」

これには、さすがのアドルファスもぽかんとしていた。

ウィルヘルミナさんとリーヴァは、自分は関係ないという風を装っていた。

「…何故、そんなことに?」

姉さんは、先程までとは打って変わって絶対零度の声になった。

これ、無意識だから凄い。

「本人が、自分に説得させてくれと」

「そして、それを許可した?」

「あぁ」

「…」

姉さんは無言であった。

ウィルヘルミナさんとリーヴァは、ここで決闘が始まるのではないかと肝を冷やしていたが。

幸い、姉さんも理性を保っていた。

…ように見えたのだが。

がしゃっ、と姉さんは腰の剣に手をやった。無意識なのかもしれないが。

やばい、とリーヴァが止めに入りかけた、そのとき。

「…あれ?」

倉庫の扉ががらりと開いて、俺はリーフリルさんと共に外に出た。