The previous night of the world revolution

「…ルシファー殿が危険ではないか」

完全に丸腰で単身倉庫に入っていこうとする俺を見て、ウィルヘルミナさんは小声で、オルタンスに進言した。

「確かに危険だが…。いざとなれば、我々が突入する」

二人がそんなことを話しているとも知らず、俺はそっと体育館倉庫に入って、リーフリルさんから三メートルくらい離れたところに、リーフリルさんと向かい合うように座った。

これ以上近づくことは、彼女は許してくれなかった。

だが、ひとまず対話の姿勢は取れた。

さて、では話そうか。

「…リーフリルさん、ですよね」

「…」

「俺は、名前ルシファーって言うんです。ばらさないでくださいね」

本当は名乗ってはいけないのだが、今回はそんなこと言ってられない。

名乗りもしない人間を、信用なんて出来るはずがないからだ。

「リーフリルさん。何年生なんですか?」

「…」

…駄目か。答えてくれない。

いきなり向こうから話させるというのは、フェアじゃないか。

「その爆弾って、あれですよね。実習で使う奴ですよね。俺も騎士官学校卒の人間なので、やりましたよ。実習。でも下手くそでね。真面目にやってるのに起爆させかけて、教官に青い顔をされたことがあります」

これは、実話である。

「お陰でその学期の成績、Cでしたよ。今でも爆弾実習苦手ですからね。友人につけられたあだ名は、ボムデストロイヤーです。格好良いから許しました」

これも実話であり、命名してくれたのは勿論、ルキハである。

爆弾の話はこれくらいにして、他に何か喋ることはないか。

「あ、跳び箱…。跳び箱ある。リーフリルさん、跳び箱跳べます?」

場所が体育館倉庫なので、周りにあるのは体育の授業で使う道具ばかり。

その中に、跳び箱を見つけた。

「俺は跳べるんですけど、でもこれも下手くそで。一回、踏み切り板で踏み切りきれずに思いっきり激突して、鼻血出したことがあるんですよ。跳び箱っていうのは突っ込むものじゃなくて跳ぶものなんだぞって、友人に真剣な顔で言われました」

これも実話。かつ友人とはルキハのことである。

跳ぶのかと思いきや思いっきり突っ込んでいくから、ルキハはぽかーんとしたらしい。

「あとは…そうだなぁ。リーフリルさん、好きな授業とかあります?」

「…」

「俺も去年までは帝国騎士官学校の学生だったので、話は通じると思いますよ。何の授業が好きですか?」

「…歴史」

そこで初めて、リーフリルさんは、ぽつりとそう返事をしてくれた。