The previous night of the world revolution

「…ルシファー殿?」

「あなた達、何を馬鹿なこと言ってるんですか?」

俺には、全く理解が出来ない。

「どういう意味だ?」

「だって、彼女怯えてるじゃないですか」

別段、怖くも何ともない。爆弾を持っていながら、彼女は何も恐ろしいことなんてないのだ。

「ただただ、怖がってるだけです。怖がってるのに、皆して群がって、出てこいなんて脅して、そんなことしたって余計怖がるだけでしょう?」

どうして、誰も分からない。

彼女だって、こんなこと、やりたくてやってるんじゃないのだ。

「泣いてたじゃないですか。泣いてる子供に怒鳴り付けてどうするんです」

そんなことしたって、余計泣くだけだ。

ちゃんと宥めなきゃならない。彼女が何を悲しくて泣いてるのか。それを理解しなきゃならないのだ。

それなのに、この人達は。

「あんな爆弾、何も怖くないです」

あの子はただ、話を聞いて欲しいだけ。

辛い気持ちを誰かに知って欲しくて、大人の気を引きたくて泣いてる、子供と同じなのだ。

だから、何も恐れることはない。

「…あなた」

俺は責任者らしき教官に声をかけた。

「彼女、あの立てこもってる生徒…名前は?」

「え?」

「名前は何て言うんです」

教官は意表を突かれたような顔をして、しどろもどろになりながら答えた。

「え、あ…えぇと、ヴェルヴィット家の…」

「名字じゃなくて名前です」

「な、名前…」

名前すら知らずに説得しようとした馬鹿なのか。こいつは。

「リーフリル・アイリアル・ヴェルヴィットです」

答えられない責任者に代わり、別の教官がそっとフルネームを教えてくれた。

そうか。リーフリルさんか。

ヴェルヴィット家と言えば…俺の記憶が確かなら、中流階級の貴族だったはずだ。

「オルタンス殿。俺に説得させてもらえませんか」

俺は、オルタンスにそう直訴した。

駄目だと言われるかと思った。お前みたいな若輩者に、この場を任せることは出来ない、と。

堅実主義の彼のことだから、説得は諦めて、彼女が疲れるのを待って突入した方が確実だと言うかと思った。

しかし。

「…分かった。くれぐれも気を付けてくれ」

意外なことに、彼は淡々と許可を出してくれた。

「…ありがとうございます」

本当は、こんな出張るつもりはなかったんだけどなぁ。

皆何も分かってないから、仕方ない。

俺が行くしかなかった。