The previous night of the world revolution

「誰も来ないで!あっちに行って!」

少女の声は、怯えているようだった。

何かに恐怖している。そんな声だった。

「話があるなら聞くから、何か…」

ウィルヘルミナさんは、そう言いながら倉庫に足を踏み入れかけた。

しかし。

「来ないで!爆破するわよ!」

扉の隙間から見えた少女の顔は、涙で濡れていた。

髪はくちゃくちゃで、真っ赤な目をしていた。

あ、やっぱり。

爆破すると脅されれば、ウィルヘルミナさんも足を止めざるを得なかった。

「我々は帝国騎士団だ。事態を収拾する為に要請された。貴殿の言い分があるなら、我々が聞こう。だから、爆弾を捨ててくれないか」

足を止めたウィルヘルミナさんの代わりに、オルタンスが淡々と彼女に向かって言った。

しかし、それも無駄だった。

「やめて!誰も来ないで!近寄らないで!」

「…」

交渉の余地はなし、か。

それもそうだろう。

オルタンスは数歩引いて、俺達に振り向いた。

「駄目だな。冷静な会話が出来ない…。最悪、突入するか…」

「どうせ相手は小娘です。もう数時間も放っておけば、音をあげるでしょう」

学校側の教官は、小馬鹿にしたようにそう言った。

「そうです。無限に体力が持つ訳がない。しばらく放っておいて、疲労がたまったところを突入すれば、取り抑えられるでしょう」

他の教官もそう言い、オルタンスもその言葉を否定はしなかった。

…この人達、何言ってるんだろう。さっきから。

「全く、面倒なことをしてくれた。あの馬鹿女…」

吐き捨てるように言った教官の、その目。

その目は、彼女のことを見てはいなかった。

…これは、駄目だな。

どうして、誰も理解しない?

「…あなた達は一体、さっきから、何を言ってるんですか?」

俺は、心からそう尋ねた。