The previous night of the world revolution

「久し振りだな、ルシファー。元気にしていたか?」

数ヶ月ぶりに会った姉は、久々に俺に会えたからか、心なしか嬉しそうであった。

ウィスタリアの邸宅の、テラス。明るく日の差すその場所で、俺達はティータイムを過ごしていた。

昔からよく、こうして姉と紅茶を飲んでいたから。

その日も姉とテーブルを囲んで、二人で座っていた。

多忙な姉とゆっくり話せるのは、この場所だけだった。だから俺は昔から、この時間が好きだった。

「…はい」

俺は出来るだけ明るく、頷いた。

…本当は、あまり元気とは言えないのだが。

少なくとも、身体はまずまず元気だから。

疲れているのは、メンタル的な部分だ。

「どうだ?学校は。もう慣れたか?」

「…」

…それを、聞いてくると思っていた。

俺は言わなければならないはずだった。学校で何が起きているのか。

…でも。

「…」

「…?どうした?」

「…いえ…」

言葉が、何も出てこなかった。

姉は、俺が学園に合格したと聞いたとき、とても喜んでくれたのだ。

頑張れと。応援してくれた。期待してくれていた。

その姿を思い出したのだ。

…とてもじゃないが、言えなかった。

姉に余計な心配をかけてしまう。姉に失望されてしまうかもしれない。

姉の期待を…俺は裏切りたくなかった。

この人が、俺をどれだけ大切にしてくれていたか。

姉がどんな答えを求めているかは分かっている。

学園にはもう慣れた、毎日充実している。

そう答えて欲しいはずなのだ。明らかに、そんな答えを期待しているのだ。

それを思うと、いじめられていて辛い、なんて言えなかった。

姉の前で俺は、誇れる弟でありたかった。

…だから。

「…毎日、大変ですけど、でも充実してますよ」

俺は、そう答えた。

「やり甲斐もありますし…。毎日楽しいです」

全部嘘っぱちだった。そんなはずがなかった。

思い出してみろ。お前が学園でどんな目に遭っているのか。

どれほど凄惨な目に遭っているか、今ここで、姉に話してみろ。

「そうか」

気づいて欲しかった。俺の嘘に。

でも姉は、気づかなかった。

「それは良かった。騎士官学校は帝国でも最高の学校だからな。あそこを出ればお前も箔がつくだろう。しっかり励めよ」

姉は嬉しそうだった。

それはそうだろう。望んでいた通りの、百万点の回答を、俺がしたのだから。

「…はい」

俺は、笑った。

笑って、全部誤魔化そうとした。

上手く笑えているのか、分からなかった。