The previous night of the world revolution

名前は、ルシアナ・アークトゥルス。

ウィルヘルミナさんの私的な友人であると同時に、ルティス帝国における女性の権利擁護活動の第一人者であるそうだ。

女性に年齢を聞くなんて畏れ多いので出来ないが、見た目、ウィルヘルミナさんとあまり変わらないように見える。

こんなに若くして、女性支援活動の第一人者とは…。一体何があって、そんなことになったのか。

聞きたかったけど、それはさすがに初対面では無理だ。

「えーっと…。俺は、若輩者ですが、一応これで帝国騎士団の四番隊隊長です。ウィルヘルミナさんに誘われて、女性の支援活動をお手伝いしてます」

俺はルシアナさんに、そう自己紹介した。

名前を言う訳にはいかなかった。原則として、機密保持の為、分隊長以上の帝国騎士は一般人に名乗ってはいけないこととされている。

私的に親しい仲になり、信頼のおける相手なら話は別だが。

だからルシアナさんは、ウィルヘルミナさんの名前を知っている。

「隊長さん…。随分お若いのに、隊長さんなんですね。凄いです」

ルシアナさんは驚いたようにそう言った。

「いえいえ、俺なんてまだまだ新参者ですから。ウィルヘルミナさんを手伝ってるなんて名ばかりで、足引っ張ってるレベルですよ」

あながち謙遜でもない。この分野に関しては、俺はひよっこも同然だ。

しかも俺は男。虐げられている女性の気持ちは、想像でしか分からない。

「でも、熱心に活動されてるんでしょう?」

「えぇ、まぁ…。それなりには」

「それだけでも充分です。男性でこのような活動に参加してくださる方が、そもそも稀ですから…」

「…」

…確かに、そこは女性支援の場においてネックになるところだ。

「だから、今日はお会い出来て本当に光栄です。今度とも宜しくお願いしますね」

「こちらこそ。微力ながらお手伝いさせてください。宜しくお願いします」

手を差し出すと、ルシアナさんはがっちりと固い握手を交わしてくれた。

素晴らしい。友好への第一歩を踏み出し…、

「えっと…おやつタイム…邪魔しちゃってごめんなさい」

ルシアナさんは、ちょっと申し訳なさそうに付け加えた。

「…それはなかったことにしましょうよ…」

後ろにいたルキハが、ちょっと噴き出しているのを俺は聞き逃さなかった。

他人事だと思って。笑い事じゃないっての。



…そんな感じで、ルシアナさんとのファーストコンタクトは、恙無く終わった。

…恙無くね。