The previous night of the world revolution

「ルキハさーん」

自室でタキシードに着替えるなり、俺はルキハの部屋を訪ねた。

結局制服の方は、来週の納品になるそうだ。

こればかりは仕方ない。

届いたばかりのタキシードに袖を通し、一番に見てもらおうとルキハのもとを訪れた。

すると。

「ん…?あぁ。…ふっ」

部屋の中にいたルキハは、俺を見るなり、その反応。

おい待て。ふって何だふって。

今鼻で笑っただろ。

「…意外と似合うでしょ?」

「…」

何故無言?

「だってだって、仕立て屋さんが、似合うって言ってくれたんですよ!黒似合いますねって!」

「お前…それを真に受けたのか?良いお客様だな…」

「…」

俺の自信は、地を這うほどに落ちて、儚く崩れ去った。

「酷い…。嘘でも似合うって言ってくれれば良いのに…」

それくらいの優しさがないのか。この人は。

他人には優しくしましょうって、習わなかったのか。

「あはは。冗談だ、冗談。ちゃんと似合ってるよ。白よりは黒の方が似合うな、お前は」

ルキハは笑いながらそう言ったが、その言葉は何処までが本気なのか。俺はもう人間が信じられない。

「俺は今人間不信です」

「本当だよ。似合ってる」

…信じて良いのだろうか?

…ん?いや、ちょっと待て。それよりも。

「…ルキハさんもタキシードなんですね」

「あぁ。今気づいたのか?」

自分のこと見てもらおうと頭が一杯で。

よく見たら、いやよく見なくても…ルキハは制服ではなく、彼もタキシードだった。

しかも、俺の五倍は似合ってる。

彼も黒似合うんだな…。

「制服着るとか言ってませんでした?」

「そのつもりだったんだが、お前がタキシード着るなら、合わせてやった方が良いかと思って。仕立ててもらった」

「…」

あぁ、神よ。

ルキハという、心優しい友に祝福を。

「ルキハさん~」

なんてことをしてくれるんだ、惚れてしまうじゃないか。

「情けない声を出すな。ほら、行くぞ」

「ありがとうございます…」

ルキハが俺の友人で、本当に良かったと。今まで何度も思ったことを、今日も思った。