The previous night of the world revolution

引っ張られた耳の痛みが退いたので。

「良いじゃないですか。ドレス着ましょうよ。この赤いマーメイドラインのドレスなんて絶対似合いますよ」

「私は帝国騎士団の副団長を担う身だぞ。そんなチャラチャラした格好で出られるか」

チャラチャラって…。ドレスだって立派な正装だというのに。

「じゃあ何着るんですか?」

「これだ。騎士団の制服」

俺が汚した礼装用の制服か。

つまんねー。

「姉さんは俺が知る中でルティス帝国一の美人なんですけどねー。中身がこれじゃ男も逃げてくって…いたたたたた!右!右は引っ張らないって約束じゃないですか!」

「もう一度言ってみろ貴様。そんな約束をした覚えはない」

ちぎられかけた右耳を涙目で庇う。酷い。

おのれ。さすが姉さん。ガードが堅い。

「…似合うと思うんだけどなー」

「下らん」

折角美人なのに、飾らないなんて勿体ない。

俺みたいに、正装が絶望的に似合わない人間だっているんだぞ。世の中には。

「そんなに着たいなら自分で着ろ」

「冗談でしょ…」

帝国の皆様に会わせる顔がないよ。

結局、ぶーぶー言ってみたけど姉さんのガードは堅く。

仕方ないので、カタログを押し付けるように姉さんの執務室に置いて、四撃目が来る前に撤退した。