「…」

…俺は返りの車中、どよーんと沈んでいた。

無言が苦にならないくらい、俺はへこんでいた。

…落ち着いて考えてみたら。

…何?あの下手くそなスピーチ。

お前の感想なんざ聞いてねぇよ馬鹿、って皆思ったろうなぁ。

あの司会者さん、そんなしょうもないことしか言えねーのかよお前、とか思ったんだろうなぁ。

ごめんなさい。

今騎士官学校に戻れるなら、俺は教官に土下座して、スピーチの授業、評価Cにしてもらうのに。

テンパり過ぎだから。突然のこととはいえ。

緊張してるのも伝わってただろうしなぁ…。素人丸出し。格好悪い。

恥かいただけ。

「…」

ずーん、と沈んでいる俺を、ウィルヘルミナさんはちらっと横目で見た。

「…先程からどうした?疲れたか?」

「…自分のスピーチ能力の低さに絶望しています…」

「…」

「間接的にウィルヘルミナさんの株まで下げてしまった…。ごめんなさい…」

何なら車内で土下座しても良いという勢いで謝ったが。

「済まない。貴殿に喋ってもらう予定はなかったのだが…。司会者が勝手に」

「いえ…。咄嗟に聞かれて答えられない俺が悪いです…」

「…貴殿が何をそんなに悔いているのか知らないが、スピーチは悪くなかったぞ」

「俺の為にお世辞をありがとうございます…」

「いや、世辞ではないのだが…」

ウィルヘルミナさんは優しいから、きっとそう言ってくれてるのだ。

「むしろ用意されていたようなテンプレートなスピーチでなかったから、良かった。本心で言ってるのが伝わってきた」

「…」

「だから、そう気に病むことはない」

…あぁ、神よ。

ウィルヘルミナさんがいて、良かった。

「ありがとうございます…」

「…興味が湧いただろうか?この問題に…」

「えぇ…とても」

俺は、これからもウィルヘルミナさんと女性・子供の人権擁護活動に参加することを約束した。

暇人童貞の俺でも力になれるなら、何でもやってみよう。