The previous night of the world revolution

古来より女性の権利については、時代や土地によって大きく変わっているのが常であるが。

ルティス帝国では、基本的に男女同権。男性に認められる権利は女性にも認められるし、逆もまた然り。

女性である姉さんが帝国騎士団副団長に就任しているように、実力があれば騎士団でも上位の役職に就ける。

そしてそもそも、現在のルティス帝国のトップは女王である。

それらを見ても分かるように、ルティス帝国において女性の立場は、周辺国と比べても低いとは言えない。

しかし。

それはあくまで…制度上そうなっている、というだけの話だ。

「貴殿も…制度上男女同権ということにはなっていても、実際完全な男女同権ではないことは分かっているだろう?」

「…えぇ」

いくら権利が同等にあると言えど…元々ある男女の差が埋まる訳ではない。

姉さんみたいな、男顔負けの剛力な女性は例外として…世間一般の女性は、どうしても男性より力が弱いし、体格差もある。

これは生まれつきのものであり、変えることは出来ない。

「嫌な話になるが…。配偶者からDVを受ける女性、性犯罪に巻き込まれる女性は少なからずいる。更に、貧困問題を抱える母子家庭…。解決すべき課題はいくらでもある」

「そうですね…」

確かに、嫌な話だ。

でもそういう事実があるということは、認めなければならない。

「そして、女性とセットで考えられるのが、子供だ。そうした問題を抱える女性の子供」

「…特に女の子、ですか」

「そうだな」

身寄りのない、孤児について。

何処の国でも必ず一度は議題に挙げられると思うが、ルティス帝国でも例外ではない。

我が国で問題になっているのは、女の子の孤児達。

ルティス帝国にも児童養護施設はあるが、入所しているおよそ七割の子供が、女の子だ。

何故そうなるのかと言うと、女の子は引き取り手がいないからだ。

施設では、子供に恵まれない夫婦や跡取りのいない家族が、孤児を引き取ることが出来るのだが。

男と女でどちらが良いかと聞かれたら、やはり一般的に家を継ぐとされる男の子の方を、好んで引き取っていく人が多く。

結果的に、施設には女の子ばかりが残されるのだ。

施設育ちではどうしても資金が限られる為、あまり高度な教育は受けられない。

更に、育った施設の環境にもよるが…。劣悪な施設で育った子供の中には、反社会的な考え方をしてしまう子もいる。

そういうこともあって、施設で育った女の子は、社会に出ても上手く適応出来ないことが多い。

結果的に生活は貧しくなり、自ら身を売るような境遇になることがある。そしてその女性に子供が出来れば、その子は母親と似たような人生を歩むことになる。

負の連鎖、という奴だ。

一見豊かに見えるルティス帝国だが、そのような汚い問題も、密かに隠れているのだ。