The previous night of the world revolution

会議は無事に終わったけれども。

…その後のアドルファスのせいで、後味が悪い。

大体何だよ風俗って。帝国騎士団の隊長ともあろう者が風俗って。風紀を乱すにもほどがある。

俺はまだ若いんだから、これからいくらでも出会いはあるし…多分。

やっぱりそういうのは、好きな人とだけするものであって。一時の欲を発散する為に、妄りにやって良いことじゃない。

アドルファスだって貴族なんだから、その辺の貞操観念はちゃんと持つべきじゃないのか。

…にしてもあの人。行ってんのか。風俗。

…しかしどんなところなんだろうなぁ。

なんて余計なことを考えていた、そのとき。

「ルド・ウィスタリア卿。少し良いだろうか?」

「どぅはっ!はははははい!はい!?」

いきなり執務室の扉をノックされ、俺は現実に戻ってきた。

あっぶな…。アドルファスの魔の手に落ちるところだった。

「…取り込み中だったか?」

扉を少しだけ開けて、その人は怪訝そうに俺を見つめた。

「いえ…。大丈夫です…。って」

…訪ねてきたのは、件のウィルヘルミナさんだった。

何この気まずい感じ。

「え、あの…ウィルヘルミナさ、じゃなくて…は、ハーシュヴァイン卿…?」

「別に名前で呼んでくれて構わないが」

「あ、はい…」

ちなみに隊長間の呼び方だが、通常、姓に卿をつけるのが最も礼儀正しい呼び方である。

とはいえそれはかなり堅苦しいので、普段は大抵、名前に殿をつけたり…俺なんか姉さんをただ姉さんと呼んでるし、公式の場でない限りは割と自由だ。

双方合意していれば、名前呼びでも構わない。

「じゃあ、その…。俺も名前で良いです」

「助かる。ルシェ殿と呼び名が被るからな」

そんな訳で、双方合意。

いや、呼び方とか今はどうでも良くて。

俺風俗とか行きませんから!と、そこをまず明確にしておきたいのだが。

「…それで、何か?」

でも口に出したら余計恥ずかしいに決まっているので、何事もなかったように話す。

心の中は涙目。

何だろう。怒られるのかな。部下の面倒くらい見とけ馬鹿、って。

それとも、お前童貞なの?ぷフフ。とか言われるんだろうか。

それはない。

「…実は先程、会議の後貴殿がアドルファス殿と話しているのを聞いたのだが」

「…」

「…図らずも貴殿が未経験であることを聞いてしまった訳だが」

「…そんなとこまで聞かないでくださいよ…」

え。まさか本当に馬鹿にされるの?童貞プフフ、って?

もし馬鹿にされたら、俺は今すぐアドルファスのところに走っていって、良い店紹介してもらおう。

しかし、ウィルヘルミナさんが言いたかったのは、そういうことではないらしかった。

「貴殿は、女性や子供の人権問題について、興味はないだろうか?」

「…」

彼女は俺に、それを聞きに来たのだと分かった。